アスリートがこぞって取り入れる理論を一般化
トップアスリートが押し寄せる背景には、鴻江が独自に編み出した「体の動かし方の極意」を得られる貴重な機会であることが挙げられるだろう。鴻江は、2006年の第1回、2009年の第2回WBCをはじめ、2021年東京五輪では女子ソフトボール代表チームに帯同した経験を持つ。20年以上にわたってアスリートと対峙して作り上げたのが、人の体を「うで体」と「あし体」の2タイプに分類する独自の「鴻江理論」だった。鴻江は「うで体」「あし体」について、次のように説明する。
「簡単に言うと、うで体は猫背型。あし体は反り腰型です。
よく、“体のバランスを整えよう”と言われたりしますが、私に言わせると、人は誰でも体の歪みを持っています。猫背か反り腰かという以外にも、具体的には、うで体は右肩が下がっており、右の腰が少し前に出ている。逆に、あし体は左肩が下がり、左腰が前に出ています。
こういった歪みがあるのは普通のことで、決して悪いことではありません。大事なのは、自分がどちらのタイプか知り、タイプに合った体の動かし方をすることです」
もちろん、人によって程度の違いはあるが、タイプによって運動時に気をつけるべきポイントがあり、合わない動かし方をしていると、アスリートはパフォーマンスが上がらないだけでなく、ケガや故障につながるリスクもある。
そして、その考え方は、一般の人にも当てはまるのだという。鴻江が自身の考え方を一般化した書籍『一生歩ける喜び 「うで体・あし体」鴻江理論で人生が変わる』では、7つのチェックポイントを設けて自分がどちらのタイプかを見極めた上で、日常のさまざまなシーンをあげ、「何をすべきで、何をすべきでないか」をイラストを用いて平易に解説。また、タイプ別のおすすめストレッチを図解入りで詳細解説している。
トップアスリートの活躍を支える鴻江理論を実践すれば、「一生自分の足で歩く力」を手に入れることができるだろう。
取材・文/祓川学(ストライカープレス)