年が明けて2025年。今年は“昭和100年”に当たる年だ。世界大戦が勃発し、敗戦し、復興を遂げ、高度経済成長を迎える──激動の時代の出来事は今、NHK連続テレビ小説『虎に翼』、若者を中心にベストセラーとなった小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、口コミでロングランヒットとなった水木しげる生誕100周年記念作品映画『ゲゲゲの謎』など、様々な形で脚光を浴びている。
そんな昭和の出来事のうち、戦後の混乱が続いていた1948年1月26日、東京都豊島区椎名町で起きた「昭和最大のミステリー」と言われている「帝銀事件」をご存じだろうか。
閉店間際の帝国銀行(現在の三井住友銀行)椎名町支店に現れた、東京都衛生局から来たという中年の男。「近所で集団発生した赤痢を防ぐために予防薬を飲むように」と説明し、特殊な方法でその場にいた行員や小学生の男児を含む16名に青酸系毒物を飲ませ、そのうち12名を殺害し、16万円(現在の価値で1600万円)の現金と1万円の小切手を奪って逃走したという凄惨な事件である。
この事件については青酸系毒物の特殊な摂取のさせ方から、戦時中ハルビンで生物兵器を研究していた関東軍731石井部隊関係者が関わっているのではないかということで、旧軍人を中心に捜査が進められた。しかし、当時日本に駐留していた連合国軍事総司令部、いわゆるGHQが、突如旧陸軍関係者への捜査を禁止してしまう。このGHQによる不可解な禁止命令の理由はいまだにはっきりしておらず、謎のままだ。