「過保護」のツケ
佐々木は高卒6年目となる23歳でまだ成長過程にあるはずだが、なぜ球速が落ちたのか。元ロッテの先発投手で野球評論家の前田幸長氏はこう言う。
「僕自身、ちょうど今の佐々木くんと同じぐらいの年齢の入団7年目にストレートの球速が落ち、勝てなくなって2年間ほど悩みました。後になって気がついたのがフォームの問題。速くて強い球を投げようと、力んでテイクバックを背中側に大きく引いていた。そのせいで腕が前に出ず、ボールに力が入らなくなっていました。
これは本人が認識できないほんの2~3センチのフォームの変化にもかかわらず、球速は大きく低下した。佐々木くんのフォームが以前と変わったようには見えないですが、ほんの微かな変化が影響している可能性があります」
入団1年目の佐々木は育成重視で一軍出場登録がなかった。その後も戦線離脱が多く、プロ5年間で一度も規定投球回に達していない。西武やソフトバンクなどで投手コーチを務めた杉本正氏は、こうした「過保護」にも見える育成方針が球速の低下につながった可能性を指摘する。
「昨シーズンは18試合に先発登板して10勝5敗と、自身初となる2桁勝利をマークしました。しかしその分、登板数や登板間隔がタイトになり、疲労が蓄積してスピードボールが投げられなくなったのではないか。入団以来、大切に育てられすぎたツケがコンディションやスタミナ不足として顕在化したと思われます。
ドジャースも1年目はロッテのように登板間隔を空けたり、イニング数を制限したりして慎重に起用するのでしょう。その間に、大谷のようにトレーニングを積み重ねて筋力や体力を増せば、ピークの2023年時の球速に戻せるはず。まだ余力を残しているように見えるので、今後どれだけ自分を追い込めるかがカギとなるでしょう」
ただ、競争の厳しいメジャーは常に結果が求められる世界でもある。MLBに詳しいスポーツジャーナリストの友成那智氏が語る。
「ドジャースの先発は6人ローテです。そのうち大谷や山本ら4人は確定で、残り2枠を5人で争うことになりそうですが、2022年に16勝をあげたトニー・ゴンソリン(30)ら強力なライバルたちがいます。1年目でのローテ入りは難しい。先発登板を続けて球速が落ちた状態で勝負しようとしたら、メジャーでは打たれます。防御率3.50~4.00くらいになるのではないか。かつてドジャースに在籍した前田健太(36)のように調子が落ちた時はリリーフに回される可能性も覚悟する必要があるでしょう」
かつての剛速球を取り戻し、大谷、山本との「侍ローテ」でメジャーを席巻することはできるか。
※週刊ポスト2025年2月7日号