“数字稼ぎ”の疑念
一方、乗降客の多い駅周辺など、喫煙所が必要と考えられる場所では整備が進んでいない。
典型例が中央区の地下鉄「谷町四丁目」駅だ。谷町線と中央線が乗り入れる同駅は、1日の乗降者数が約9万1000人。9号出入り口からすぐのNHK大阪放送局内には地域の歴史を再現した博物館があり外国人観光客も多い。
9号出入り口前の歴史博物館前広場を施行直前に訪れると、ベンチに座る数人の会社員グループがいずれもタバコを吸っている。ベンチの下には20本以上の吸い殻が散乱していた。喫煙中の男性は「喫煙所があればそこで吸うんだけどね……新しい条例だと、ここでもダメになるの?」と口にした。施行後はこの広場での喫煙も1000円の過料徴収の対象となる。
こうした“ミスマッチ”の多発について大阪市環境局事業部事業管理課の路上喫煙対策担当にぶつけると、こう説明した。
「設置にあたり、地元に精通する各区役所にお願いして(場所の)選定をしていただいた。どうしても公用地で建てられる場所が少なく、住宅地の設置も地元の反対でなかなか難しい。基本的に駅前など人が多いところを選ぶ基準がありますが、必ずしもそうできていない可能性はあります。
(谷町四丁目の駅前など)路上喫煙やポイ捨てが多い場所に置けたらベストなんですが、様々な事情がある。あの周辺は史跡の関係があって簡単にはつくれないんです」
一方、民間業者の指定喫煙所で目立つのが「パチンコ店」だ。北区では市のホームページに記載された指定喫煙所31か所のうち12か所がパチンコ店の店内にある。
リストによれば新御堂筋の高架横にある同じビルに6つも指定喫煙所がある。現地を訪れると、そのうち5か所は遊戯台のあるフロアに行かないと使えない。店舗から出てきた男性は、「市はタバコのついでにパチンコも打ってほしいんかな」と笑ったが、1月中旬時点で市のHPに載る指定喫煙所のうち、ざっと約120か所がパチンコ店内だ。これは“数字稼ぎ”ではないのか。
前出の市の担当者は当初目標とした140か所の設置をクリアしたと強調。全体の半数近くがパチンコ店内のものだと問うと「パチンコ店の喫煙所は目標の140か所(達成のカウント)に含めていません」と説明した。