中国はフェンタニルの製造・輸出大国(Imaginechina/時事通信フォト)
さらにいえば、流通や販売の過程には、日本国内の暴力団構成員や中華系マフィアとも関係のある半グレがなども多数関与している。米国でのフェンタニルを含む合成麻薬問題に、カナダルートも含めてメキシコの麻薬カルテルが関わっているとみられていることと比較すると、日本でも似たような仕組みを持つ人たちが、中国原産の薬物を違法に持ち込むビジネスを展開していることが分かる。
現時点では、がん患者の鎮痛剤として使われるほど強力なフェンタニルのような麻薬が、中国から違法に大量に持ち込まれているとか、乱用者が増えているといった話は、日本国内では聞かない。ただし、風邪薬などの市販薬の乱用が若い世代の一部で横行していたり「合法大麻」などと銘打った、得体の知れないドラッグは今なお繁華街で気軽に購入できてしまう現状がある。こうした「ニーズ」を、売人の連中は絶対に見過ごさないはずで、一気に強力な麻薬が、日本国内に蔓延してしまう可能性は捨てきれない。
アメリカが関税措置を実行したことについて「やり過ぎだ」という声もあるだろう。自国民の薬物乱用にストップをかければ済む話だと、アメリカを非難する声もある。だが、劇薬なのに規制をあまりせず、注文があるからと製造して輸出を止めない中国にまったく責任がないと言えるのだろうか。追加関税に対して報復措置を中国はとった。「現代のアヘン戦争」ともいえるフェンタニルをめぐる米中のせめぎ合いは、どのような形で「決着」を迎えるのか。