共同記者会見で記念写真を見せるドナルド・トランプ米大統領(右)と石破茂首相(時事通信フォト)
本音と建前は日本人特有の価値観だと言われるが、2月7日(日本時間2月8日)に行われた日米首脳会談の様子を振り返ると、少なくとも国際政治の舞台では国や文化に関わらず、出現するものではないか。臨床心理士の岡村美奈さんが、日米首脳会談でのドナルド・トランプ大統領の仕草や視線などから、石破茂首相に対する表と裏を分析する。
* * *
石破茂首相とトランプ米大統領による日米首脳会談がホワイトハウスで行われた。メディアやネットでは”外交ベタだと思っていたがよくやった””期待値が低かったため評価された””戦略戦術がうまくいった”などの声が上がり、おおむね成功と見られている。
首相自身も帰国後に出演したNHKの番組で「相性はお互いに合うと思う」と手応えを示したが、本当にそうだろうか。石破氏に対して気遣いを見せたトランプ氏だが、会談での仕草や振る舞いを振り返ると、石破氏への関心の低さが気になったのだ。
今回の会談でも石破氏の振る舞いや仕草に注目が集まった。首相就任以来、座ったままの握手や食べ方などが度々批判の対象となってきたこともある。大統領執務室では初の会談だというのに座り方がだらしなく、肘をついたまま握手したことで”日本の恥”というワードがトレンド入りした。だが今回の会談で本当に注目すべきだったのは石破氏よりもトランプ氏の仕草だ。
トランプ氏の握手は独特だ。1期目の就任時から、各国首脳と交わす握手には、主導権争いや距離の近さなどが表れていると言われてきた。安部晋三首相(当時)との初の日米首脳会談では、19秒にも渡る長い握手が注目を集めた。安倍氏と顔を見合わせ、手の平を上に向けて左手を差し出した。安部氏が手を出した瞬間、差し出した手の平をパッと開き、にこやかに笑いながら安倍氏の手をギュっと握りしめた。トランプ氏の握手は安倍氏の指が白くなるほど力強く、何度も引っ張りタップしながら笑顔を見せていた。共同記者会見の最後には、手を差し出しながら安倍氏に近づき、安倍氏の顔を見ながらぐっと引っ張るように握手した。安部氏を自分の方に引き寄せたい、味方にしたいという気持ちがあったのだろう。両首脳はここから親交を深めていった。