2017年に行われたドナルド・トランプ米大統領(左)と安部晋三元首相の首脳会談では、握手の長さが話題になった(AFP=時事)
しかし石破氏との首脳会談で見せた握手は、安倍氏の時とはまるで違った。対談での最初の握手は短かった。石破氏の顔を見て、手の平を上に左手を差し出したトランプ氏。その手に被せるように出した石破氏の右手をトランプ氏がぎゅっと握った。しかし手を離すと前を向きスッと視線を下に落とした。写真撮影のために行われた握手では、手を握り合ったまま両者が近づき笑顔を見せ、トランプ氏が握手した石破氏の手を二度ほどタップ。だがトランプ氏はカメラに向かって作り笑顔をみせただけで、石破氏の方を見なかったのだ。
会談では石破氏を褒め、共同記者会見でも直筆のメッセージと共に撮影したばかりの写真を記念品として手渡すなど気遣いを見せたトランプ氏。石破氏に好感を持ったのかと思ったが、会見の終わりは呆気なかった。いくつかのメディアも指摘したが、いつもなら互いに檀上で握手して終わるはずの共同記者会見で、トランプ氏は握手することなく壇上を降りていったのだ。それどころか、話し終えると石破氏に視線を送ることも、石破氏の方を振り向くこともなく、さっさと会場を後にしてしまった。本当に気遣うつもりがあるなら、相手を見もせず壇上を降りるだろうか。
今回の会談で日米関係は上々の滑り出しを見せたとメディアなどが報じている。外交の観点からいえばそうだろう。トランプ氏の仕草を見ていると、関心があったのは自分が望むことを石破氏がやってくれるか、提案してくれるかどうかであり、石破氏本人と積極的に良好な関係を築いていこうという意識は感じられなかった。表面上、うまくやっていけることを演出したに過ぎないだろう。トランプ氏の表と裏が仕草から見えた気がした。