「選択的夫婦別姓」反対派の高市早苗氏(時事通信フォト)
選択的夫婦別姓制度の導入をめぐり、自民党が議論を再開した。保守派からは旧姓の通称使用の拡大で対応できると主張する声が根強く、これまで議論が進んでいなかった。選択的夫婦別姓に賛成の立場をとる作家の甘糟りり子さんはどう考えるのか。
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「選択的夫婦別姓」についての議論がようやく本格的に始まるようだ。30年にも渡って棚上げされていたテーマである。
私はもちろん賛成。結婚に関して選択肢があるのはいいことだし、「家」という概念もそろそろアップデートされるべきだ。というか、あくまでも「選択的」なのだから反対することはないと思うのだけれど。
反対派の象徴である高市早苗さんは“社会が混乱する”という主張をしているけれど、そうかなあ。むしろ“強制的夫婦同姓”で混乱を押しつけられている人は多い。
かつて担当編集だった女性は働き盛りの年代に結婚をした。いくつもの入稿&校了作業、取材を抱えながら、あらゆる公的書類やクレジットカード、銀行口座、保険証等の名義を変更しなければならず、疲労困憊していた。友人の会社経営者の女性は離婚した際、登記から何から名義変更しなければならず、これもまた大きな労力を要した。
アパレルで働いている友人は結婚しても旧姓で働いており、病院か役所ぐらいしか戸籍上の名前を呼ばれる機会がなく、疲れている時に病院で苗字を呼ばれても自分のことだとすぐには気がつけなったそうだ。海外出張の際、パスポートに記入されている苗字と通称が異なるのでコレクションの招待状がホテルに届かなかったこともあった。
仕事上も結婚後の苗字に変える女性もたまにいるが、今度は周りが混乱する。名刺の刷り直し、メールアドレスの変更等の作業もないに越したことない。
知り合いの共働きのカップルは、そうした徒労を引き受けてまで籍を入れなくてもいいと判断し、事実婚となった。お子さんが生まれ、母親の姓を名乗っているが、もちろん父親とも仲が良い。二人とも愛情を持って子供を育てているから。
婚姻届を提出する夫婦の場合、実に約95%は女性側が男性側の姓に変更している。これが現実である(男性が姓を変更すると美談のようにいわれたりもするのもおかしな話)。女性が働くのは当然となった今の社会で、女性側だけにこうした不利益を押し付けるのはもはや限界に来ているのだ。
だったら結婚相手の男性に姓を変えてもらえばいい、なんていう人もいるが、それを承知する男性は少ないし、いたとしてもその男性に無駄な(あえて無駄といいますが)労力を使わせたところでなんの解決にもならない。