国内

《選択的夫婦別姓の議論再開》“社会が混乱する”主張に作家・甘糟りり子さん「むしろ“強制的夫婦同姓”で混乱を押しつけられている人は多い」

「選択的夫婦別姓」反対派の高市早苗氏(時事通信フォト)

「選択的夫婦別姓」反対派の高市早苗氏(時事通信フォト)

 選択的夫婦別姓制度の導入をめぐり、自民党が議論を再開した。保守派からは旧姓の通称使用の拡大で対応できると主張する声が根強く、これまで議論が進んでいなかった。選択的夫婦別姓に賛成の立場をとる作家の甘糟りり子さんはどう考えるのか。

*    * *

「選択的夫婦別姓」についての議論がようやく本格的に始まるようだ。30年にも渡って棚上げされていたテーマである。

 私はもちろん賛成。結婚に関して選択肢があるのはいいことだし、「家」という概念もそろそろアップデートされるべきだ。というか、あくまでも「選択的」なのだから反対することはないと思うのだけれど。

 反対派の象徴である高市早苗さんは“社会が混乱する”という主張をしているけれど、そうかなあ。むしろ“強制的夫婦同姓”で混乱を押しつけられている人は多い。

 かつて担当編集だった女性は働き盛りの年代に結婚をした。いくつもの入稿&校了作業、取材を抱えながら、あらゆる公的書類やクレジットカード、銀行口座、保険証等の名義を変更しなければならず、疲労困憊していた。友人の会社経営者の女性は離婚した際、登記から何から名義変更しなければならず、これもまた大きな労力を要した。

 アパレルで働いている友人は結婚しても旧姓で働いており、病院か役所ぐらいしか戸籍上の名前を呼ばれる機会がなく、疲れている時に病院で苗字を呼ばれても自分のことだとすぐには気がつけなったそうだ。海外出張の際、パスポートに記入されている苗字と通称が異なるのでコレクションの招待状がホテルに届かなかったこともあった。

 仕事上も結婚後の苗字に変える女性もたまにいるが、今度は周りが混乱する。名刺の刷り直し、メールアドレスの変更等の作業もないに越したことない。

 知り合いの共働きのカップルは、そうした徒労を引き受けてまで籍を入れなくてもいいと判断し、事実婚となった。お子さんが生まれ、母親の姓を名乗っているが、もちろん父親とも仲が良い。二人とも愛情を持って子供を育てているから。

 婚姻届を提出する夫婦の場合、実に約95%は女性側が男性側の姓に変更している。これが現実である(男性が姓を変更すると美談のようにいわれたりもするのもおかしな話)。女性が働くのは当然となった今の社会で、女性側だけにこうした不利益を押し付けるのはもはや限界に来ているのだ。

 だったら結婚相手の男性に姓を変えてもらえばいい、なんていう人もいるが、それを承知する男性は少ないし、いたとしてもその男性に無駄な(あえて無駄といいますが)労力を使わせたところでなんの解決にもならない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン