2019年に開始された在留資格「特定技能」
日本では深刻な人手不足のなか、外国人材を新しい働き手として待ち望んでいる雇用主も多いだろう。しかし円安が加速する日本は、外国人にとって“お金を稼ぐ場”として決して魅力的とはいえないはずだ。それでも外国人労働者数は230万2587人で前年比12.4%増(25万3912人増、2024年10月時点)で、届出が義務化された2007年以降、過去最多を更新した。
外国人が日本にやって来るのは、一体なぜなのか──。
外国人材と人手不足の日本企業を多数マッチングしてきた「株式会社ジンザイベース」の代表取締役・中村大介氏が、外国人労働者の実態を綴った『日本人が知らない 外国人労働者のひみつ』(白夜書房)より、円安でも外国人材が増え続ける理由をお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第2回。第1回を読む】
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外国人材に頼らずには日本経済は成り立たない。これは断言していい。そして、政府はそれをわかっているから、ますます「外国人材ウェルカム」な姿勢になっている。
とはいえ、円安が加速するなかで、日本の地位はこれまで以上に低下している。海外で働こうとするアジア人の間でも、韓国やオーストラリアのほうがはるかに人気がある。日本人がワーキングホリデーでオーストラリアに行くと、それなりの貯金ができるという時代だ。お金を稼ぐだけなら、日本に来るのはいい選択ではない。
では、なぜ日本に来るのか。
一番大きな理由は、外国人が永住資格を取りやすい国だから。
外国人に永住資格を与えるにあたっては、諸外国では厳しい制限を設けている。スポーツ選手のような特殊な技能がある人、あるいは巨額の資産を持っている人でもない限りは、基本的に高学歴で専門性の高いスキルを持っていること、つまりエリートホワイトカラーであることが条件になる。
一方、日本の現在の制度はどうなっているか。
まず、外国人が日本で働くための在留資格として特定技能1号がある。これは永住資格ではなく、期間のある在留資格だが、学歴要件はない。基本的に業種ごとの筆記試験の合格と、日本語検定4級以上を取得次第、特定技能1号にはなれる。
問題はその後だ。特定技能には2号もある。特定技能2号にレベルアップするためには、1号である程度働いて、経験を積む必要がある。たとえば外食業の場合は、勤務先での実務が概ね2年以上店舗管理の補助(副店長やサブマネージャー)として働いた経験が必要になる。
実務経験がOKとなったら、また試験がある。これは1号に比べればかなり難しいことは難しい。
晴れて試験に合格して、(外食業に限り)日本語検定試験もN3以上を取得すれば、特定技能2号になることができる。
すると、実質的な永住資格が手に入るのだ。家族を呼び寄せて一緒に住むこともできる。