「菱」の代紋が見える。1978年11月1日、三代目山口組と二代目松田組との抗争「大阪戦争」終結を宣言したときの様子(時事通信フォト)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ヤクザが所属する団体の「代紋」に、微妙な違いが生じる理由について。
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「山口組の代紋は組によって違いがある」。
六代目山口組で直参組長がつけるプラチナ製の代紋“プラチナ”について聞いていた時、山口組関係者のA氏がそう言った。あの菱の代紋が組によって違うとはどういうことか?
代紋といえばヤクザの組織にとって団結と統制のシンボルマークであり、己の組織のブランドを誇示するものだろう。ヤクザの組織であれば大小を問わず、己の組の紋章となる代紋を持っており、代替わりとともに代々受け継がれている。六代目山口組の代紋の山菱はその意匠から”菱”と呼ばれ、稲川会は稲穂がデザインされていることから“稲穂”、住吉会は”マル住”という呼び方がされおり、ネットなどで調べればどのような意匠であるかはすぐわかる。
代紋を一般的な企業で例えるならブランドロゴや企業ロゴだろう。ブランドロゴや企業ロゴはブランドや企業を象徴してイメージを確立させ、従業員や関係者にとっては信頼と結束のシンボルになる。他のブランドや企業と差別化を図り、存在意義や価値を持たせる役割も担っている。意味合い的には代紋もロゴも同じだ。
ブランドや企業では、何種類かのロゴパターンを持つ所や、年代によって使用されるロゴが変化するところもあるが、ガイドラインに沿って店舗や商品などに規定のロゴが使われる。余白スペースやフォントの大きさ、パターンの組み合わせ、色などが厳しく決められている。高級ブランドのロゴがわずかでも変形していたり、文字が太かったりすれば、コピー品かと疑うものだ。
ところが六代目山口組のブランドロゴである菱の代紋は、微妙に違うものがいくつも存在するとA氏はいう。「みんな同じように見えるが、バッジや名刺にある代紋を比べてみると、ちょっとずつに違ったりする。本来の代紋はやや横長のひし形だが、縦が少し長い正方形っぽい代紋や、横長のわずかにつぶれたようなひし形の代紋もある」。葬式などで山口組関係者がずらりと並んだ時に見比べれば、その違いがわかるらしい。