2024年2月に撮影した大谷翔平。首周りが今年と違うように見える(写真/共同通信社)
体重を増やしてメジャーで大活躍した一方、2度の右肘のケガにも見舞われ、さらなる進化を模索している可能性があるわけだ。
難しいのは大谷が打者としての活躍も求められる点だろう。西武やソフトバンクなどで投手コーチを経験した杉本正氏は「意図的に体重を落としているとして、その状態が続くとなれば打撃面で飛距離が若干落ちるかもしれない」と指摘。ただ、投手としてはプラスに働く可能性があるようだ。
「もちろん、やせすぎると従来の球速が出なくなる恐れがありますが、筋力的な部分が落ちていなければキレはむしろ増してくるのではないか」
「制球力」と「肘への負担」の天秤
投手としての復活に向け、丁寧な調整が続く。そのなかで新たな投球フォームも披露した。
投手のフォームには、打者に正対して両腕を大きく振りかぶって投げる「ワインドアップ」、打者と正対して両腕は上げずに投げる「ノーワインドアップ」、横向きに打者と向き合って胸の前で腕を静止し、両腕を上げずに投げる「セットポジション」がある。
大谷は3勝に終わった日本ハム時代の1年目はノーワインドアップで投げていたものの、2年目からセットポジションにして2ケタ勝利を重ねた。メジャー移籍後もセットポジションから投げていたが、今回の自主トレでは一転してノーワインドアップで投球している。
ルーキー時代のフォームに戻す狙いについて、杉本氏はこう見る。
「セットポジションは上体がブレず軸足に体重を乗せられるためコントロールが安定する半面、静止した状態から動き出すので上体に力が入って肘に負担がかかるデメリットがあります。それに対し、左足を一歩引く反動を利用して投げるため上体が力まず肘への負担が軽減されるものの、軸がブレやすくてコントロールが悪くなる傾向があるのがワインドアップ。
ノーワインドアップはその2つのいわば中間と言えます。肘への負担とコントロールを天秤にかけ、ノーワインドアップを選んだのではないか」