『ママはいつもつけまつげ 母・中村メイコとドタバタ喜劇』神津はづき/小学館/1870円
母・中村メイコさんについて愛情たっぷりに綴った、神津はづきさんの著書『ママはいつもつけまつげ 母・中村メイコとドタバタ喜劇』。ユーモアたっぷりのこの追悼記をはづきさんの姉である作家の神津カンナさんは、どう読んだのか? カンナさんによる“書評”をお届けします。
* * *
我が家は芸能一家と言われるが、父が作曲家、母が女優、私がもの書き、妹が女優? 弟が絵描きというふうに、厳密に言えば母と妹ぐらいが芸能関係で、後の三人は一応、別の職業に就いている。まあ全員が自由業という家族には違いないが。
亡くなった母は元祖・マルチタレントと呼ばれたらしいが、その流れでいくと次女のはづきが母に最も近い。あれも面白い、こっちも面白いとあちこちに寄り道をする。まあ、私もそうだが、その道一筋の人は偉いと言われるが、ふらふらしている人はどうも分が悪い。うちの女たちは、気の向くままに、なんとかそれなりに自分の才覚で生きている、いわば希少女類なのかもしれない。
はづきは昔、台本の自分の台詞の中にある漢字に、ルビを振って欲しいとよく私に頼んできた。人の名前で「帯刀」とか、名詞で「松明」とか「豌豆」とか、色々振ったのだが、あるときはづきに文句を言われたことがある。
「あのー、私、海とか山とか朝とか昼とかは読めるんだけど」と。
これは読めまい、これは読めるだろうと勝手に判断するのが面倒で、私は出てくる漢字にはみんなルビを振っていたので、機械的に海も山もルビを振っていたのだ。