初の常設店舗「SHEIN TOKYO」は2022年11月に東京・原宿にオープンした。店舗はショールームという位置づけで、商品タグをQRコードで読み込みネット購入する(AFP=時事)
「中国越境EC企業のネット広告攻勢がすさまじく、TemuもSHIINも、かなり多くの日本人に認知されるまでになりました。しかし、商品は安いばかりで品質があまり良くないものが多いという日本人顧客の意見がSNS上には多い。なかには知財権などを無視した商品も売られている。自社ブランドの商品を”パクられた”と日本企業が抗議をしても、適切な対応をしないケースも多いようだ。その一方で、ウェブ広告だけでなく、日本の大手テレビ局にも大金を出し、芸能人を使った広告まで出しているのです」(経済部デスク)
試しに「Temu」をスマホでのぞいてみると、まず画面に出てくるのは「ルーレットのくじ」である。タップしてくじを止め、運が良ければ半額以上の割引が適応されるという謳い文句だが、これは誰でも「最高の割引額」でルーレットを止められるような設定になっており、日本国内の景品表示法に抵触する恐れもある。だからなのか、ルーレットの下部には「くじは演出である」旨の注意書きも記してあった。
そのまま進むといよいよ商品がずらりと並んだ画面に進むが、画面を一目見て驚愕した。何しろ、そこに売っていたのは日本で人気のアパレルブランド「ヒステリックグラマー」のロゴを用いた商品で、その価格およそ1500円。本物であれば、軽くその10倍以上の値段になるはずだ。ほかにも、人気アウトドアブランド「グレゴリー」のものだというパーカーも1600円、ミリタリーブランド「アルファ」のものだというトレーナーも1180円とありえない激安っぷりだ。Temuで販売されている各ブランドの商品について、それぞれのブランドに問い合わせてみたが「うちの製品ではない」「そもそもそんな製品を作っていない」といった回答ばかりで、筆者が見た激安の商品が正規品である可能性は、ほぼゼロ、という結果だった。
2024年1月、ユニクロがSHEINの運営会社を模倣品の販売で提訴したとき、日本で初めてのケースだとニュースになった。SHEINの模倣品問題について、海外では以前から多くのファッションブランドや小売企業、たとえばH&M、プーマ、アディダス、ドクターマーチン、ラルフローレンなどが提訴している。そして、SHEINとTemuの二社間でも、海外では様々な訴訟合戦を繰り広げながら、格安商品の販売を拡大し続けている。
とても安くて買いやすいが、模倣品の問題があるこれらECブランドは、日本の消費者にとってどのような存在なのか。
アパレルに特化したSHIINは、日本屈指のファッションエリア・原宿にショールームとしての店舗を立ち上げ、一時期は若い女性に大人気であると、雑誌やテレビがさかんに取り上げた時期があった。筆者はちょうどファッション雑誌の取材でSHIINユーザーの若い女性に話を聞いたが「安くていい」「色々な品物がある」という声はあるものの、「3回洗濯すると形が崩れて着られなくなった」「変な匂いがした」など玉石混淆の評価だった。激安なのだから、数回、着るだけで捨てることになってもコスパは悪くないということらしい。