韓国では、中国の大手通販サイトSHEIN、Temu、AliExpressで販売されている子供用冬服から、基準値を超える有害物質が検出された。安全でない子供用品をソウル市庁舎に展示。2024年11月(EPA=時事)
アパレルだけではない。日本や海外の有名メーカーの「ロゴ」だけをあしらった安価な工具、さらには米・大リーグで活躍する大谷翔平選手、ヨーロッパで活躍する日本人サッカー選手のユニフォームまで、正規品の十分の一かそれ以下の価格で販売されていた。日本国内の、とあるスポーツ用品メーカーの担当者は「TemuやSHEINで弊社ブランドの商品が販売されていて、クレームを入れると返信なく商品は消えたが、その数か月後にはまた販売されていた」と頭を抱える。
日本国内での確認はないが、韓国では昨年、TemuやSHEINを含む中国系越境ECで販売されていた商品から発がん性物質が検出されたと大騒ぎになった。中国系のECサイトで販売されている商品は安全性の検査を受けない状態で輸入されている現実があり、欧州では世界的玩具メーカーも加盟する業界団体が商品を購入して調査をしたところ、怪我をする恐れがあり、有害物質が検出されたなどの報告を出すことになった。それでも、とんでもなく安い価格で、なんとなく今の流行りの商品を手に入れられる魅力に多くの消費者は抗えない。
とはいえアメリカは、不自然なほど安い商品を大量に売りさばく中国系越境EC業者の締め出しにとりかかった。業者は大きなマーケットを縮小させられることになるが、中国が激安商品を作り続けることはやめない。低迷する中国経済のなかを生き抜くために、とにかく大量に製造して売りまくると開き直っているかのようだ。そして、その大量生産に、少なくない中国の若者たちが従事している。
越境EC向け激安商品はどこへ
昨年、2024年4月時点で新卒大学生(中国の卒業シーズンは6月)の内定率が50%を切ったと日本経済新聞が報じ、衝撃的な数字だと話題になった。今も中国では、若者の失業率が高止まりのままだ。不動産価格の下落をきっかけにバブルが崩壊しつつあると言われている中国経済。そんな中国国内で増えている仕事が、越境ECで販売される、格安商品を大量に製造する、というものだ。その労働条件は安全ではないという批判もあるが、そんなことには、かまっていられないのだろう。
「職にあぶれた中国の人々が、越境ECで販売される商品の工場に殺到しています。しかし、得られる賃金は低く、中には、ウイグルやチベットなどから連れてこられた人々が、奴隷のように働かされている、という話もある。中国は国策として、越境EC業者を後押ししています」(前出の経済部デスク)
そうすると、アメリカから締め出された中国製の格安商品、なかには品質は二の次に製造されたモノも含まれる可能性が高いが、それらはどこにいくのか。残念ながら、その多くは日本へもたらされる可能性が高いだろう。アメリカの一方的な関税措置については賛否両論だろうが、これまで見えなかった、やりたい放題の中国の姿があぶりだされつつあることは確かだ。