トランプ大統領が発表した中国からの小口貨物への免税停止はTemuとSHEINを閉め出す目的だと言われている(dpa/時事通信フォト)
国境を越えた電子商取引、越境ECの拡大が止まらない。世界のEC小売売上高全体の約半分を中国、約2割を米国が占め、3位の英国と4位の日本は約3パーセントだ(ジェトロ調べ)。このうち、2位につけていた米国が、中国から輸入される小口貨物に対する免税措置を中止すると発表し、中国が「越境EC向け」に大量生産している商品がどうなるのかと注目されている。ライターの宮添優氏が、越境ECによる激安商品のゆくえについてレポートする。
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米トランプ大統領による「関税」攻撃が止まらない。とくに中国への言及は多く、中国からメキシコやカナダを経由しアメリカへ違法に持ち込まれる薬物「フェンタニル」問題をあげて、10%の追加関税を課すとしたことが注目を集めた。このとき、同時に中国からの小口貨物への免税停止も発表された。この免税停止措置は、実際には運用が整うまで実行日時が延期されたが、今後、一般市民の生活に少なくない影響が出る可能性がある、と大手紙経済部デスクが説明する。
「これまで、アメリカでは800ドル(約11万円)以下の小口貨物については、関税が免除され、輸入申告の手続きも簡略化されていました。ですが今回の措置は、中国からの輸入品に限って小さなものでも関税をかけ、輸入手続きを煩雑化させることで数量を抑制しようという狙いが透けて見える。アメリカによる、中国への圧力とみて間違いない」(大手紙経済部デスク)
800ドル以下の小口貨物と言われると具体的なイメージがわかないだろうが、中国系ネット通販の「Temu(テム)」や「SHEIN(シーイン)」のことだと言われると想像がつくだろう。どちらもバイデン政権の頃から、低価格のアパレル製品などをアメリカへ無税で輸出するための抜け穴だと批判され、対策が必要だと言われてきた。小口貨物の免税措置が200ドル以下から800ドル以下に引き上げられた2016年には免税の小口貨物は1億件を超える程度だったのが、2020年には6億件超、2023年からは10億件超となっている(米国国土安全保障省税関・国境取締局 調べ)。現在、免税の小口貨物の大半が中国発のため、ここを課税すれば「抜け穴」対策になるということなのだろう。
「安くていい」「3回洗濯すると着られなくなった」
こうした中国越境EC企業は、日本国内にも数年前から進出。大量のネット広告を駆使し、商品の激安っぷりをアピールすることで顧客数を順調に伸ばしている。前出の経済部デスクが続ける。