元花魁で老舗女郎屋「松葉屋」の女将・いね役を演じる水野美紀(左)/大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合日曜夜8時放送中)より
「松葉屋で女郎たちがくつろぐ普段の様子も描かれますが、現場ではまず食事の豪華さに目を見張ります。これほど贅沢なものを毎日食べさせるためには、相当なお金をかけているはず。いねの手腕の見せ所です。
松葉屋ではすべてが一流で料理だけでなく、器や調度品、建物や襖の絵など、どれをとっても素晴らしい。女郎たちが身に着けるかんざしも高級なべっ甲で時間をかけて作られたものです。吉原にお金が集まり、豊かな文化が育まれたのでしょう。女郎たちは蔦重が持ってくる貸本を心待ちにして読んだりして、現代よりもゆっくりと時が流れているように感じています」
現場で頻出する“ある流行語”
1月5日に放送された第1回は、NHKの配信サービスで過去配信した全ドラマの中で最多視聴数を記録した。水野はその背景を推察して主人公の魅力を挙げ、「困難にめげず強い意思で夢を実現させる生き様は、人の普遍的な営みとして響きます。今の世でもひとかどの人物になるだろうと期待させる、“べらぼう”(桁外れ)な商才も光っている」と、蔦重を賞賛。そんな蔦重にまつわる、第1回の裏話も明かしてくれた。
「歴史ある大河ドラマとなると身構えるものですが、監督やスタッフの皆さんは遊び心があって懐が深いんです。キャストのアイディアも受け入れてくださり、第1回で蔦重が長谷川平蔵宣以に『駿河屋でございます』と見得を切る場面は、横浜流星さんのアドリブです。そこでいねが『いよぉっ!』と反応するのは、半左衛門役の正名僕蔵さんが始めたアドリブ。いねが言ったほうが面白いと正名さんからのご提案で、私が言うことになりました。
撮影では、そんな風に脚本から膨らんでいく作業もあって刺激的です。いねも場面によって台本にはない擬音を足してみたり、台詞のリズムで遊んでみたりして、キャラクターを膨らませています」
時には、蔦重と共同作業で場面に色付けをすることも。