かつての派手な華やかな姿は想像つかない女性になっていた(写真提供/イメージマート)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団組長の妻が未亡人になってからの意外な暮らしぶりについて。
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先日、十数年ぶりに姐さんと呼ばれていた女性に会った。夫だった組長が死去して以降、会う機会がなかった人だ。
当時の姐さんは全身をブランド物でバリバリに固めていた。時代はブランド全盛期。シャネルのスーツにエルメスのケリーバッグを持ち、指にはきれいに施されたデザインネイルとカルティエの指輪、ブルガリの時計を着け、組の若い衆が運転手となりどでかいベントレーに乗っていた姐さん。いったい総額いくらになるのか、ため息交じりに見たものだ。自分ではベンツのスポーツクーペを運転してエステやネイルに通い、自宅にはお手伝いさんがいた。趣味で始めた飲食店に人を呼ぶのが好きだった。
待ち合わせ場所に現れた姐さんは、昔とはまるで別人だった。セーターにデニムを合わせたカジュアルな服装。短く切り揃えられた爪にネイルはなし。指輪もなく、時計もバッグもブランド物ではない。顔立ちが際立つような派手な化粧や険しい表情は消え、ナチュラルメイクの柔和な表情。どこにでもいる普通のオバさんになっていた。見栄を張るヤクザの世界に身を置き、金のかかる女だった彼女だが、業界を離れて時間が経つとここまで変わるものなのだろうか。ヤクザが組を辞めてカタギになったとしても、こうはいかないだろう。
組長が亡くなり代替わりした後、姐さんはヤクザの世界と一切縁を切ったという。「あの頃の人とは誰とも連絡を取っていない。今は誰が組を継いでいるのか。活動はしているだろうけど、組長の頃の活気はないでしょうね」という。今はどのように暮らしているのか尋ねると「組長と住んでいた家は引っ越した」という。
「それが思ったより大変で」と話したのは、ヤクザの組長の家ならではの事だった。「組長の誕生日にはあちこちからお祝いが届き、出かければ必ずお土産をもらってきた。盆暮れには山のように届け物があった」というが、組長亡き後、もらい物や贈り物の処分に困ったのだ。「背丈ほどある水晶のインテリアや螺鈿細工のタンス、黒檀の大きなテーブルとか。ヤクザの組長へ贈る物だからと誰もが見栄を張ったんでしょう。高価なことはわかるけれど、どれもこれも大きくて重い。買取り業者を呼んでも需要がないからと買い取ってくれなかった」とこぼす。最終的にはタダなら引き取るという業者に持っていかせたという。