田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
2023年7月、札幌市・ススキノのホテルで頭部を切断された男性の遺体が発見された事件。逮捕された親子3人のうち、殺人ほう助や死体損壊ほう助などの罪に問われている父・田村修被告(61)の裁判員裁判は、2月18日に結審した。検察は懲役10年を求刑しており、判決は3月12日に言い渡される予定だ。
修被告は2月4、5日の公判で、事件の顛末を詳細に語っていた。精神科医である修被告は、瑠奈被告の「精神問題」について繰り返し主張するのだった。裁判を傍聴したライターの普通氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
所々に見える修被告の言動の不審さ
瑠奈被告は23歳のころに病院へ通う時期があった。しかし、信頼していた担当医が倒れてしまい、その後はコロナ禍で新しい病院を探しにくかったという。では、精神科医である修被告個人としての見立てはどうだったのだろうか。
弁護人「修被告としては、今回の動機はなんだと思いますか」
修被告「合理的なきっかけは浮かびません。抱えている精神問題が影響しているのかな」
弁護人「精神障害、妄想とかですか」
修被告「瑠奈の精神の原因に何があるのか、“インタビュー”していないのでわかりません」
被害者との性的トラブルの数日後、修被告は自宅で、瑠奈被告の言動を録音している。この行動についても、こう語るのだった。
弁護人「この音声ってなんで記録していたんですか」
修被告「トラブル数日での心情の“モニタリング”としてです」
医師としての習慣なのであろうが、娘を心配する親の心情からは、あまりに客観的すぎる言葉に思われた。
また前述の通り、事件後も数週間、瑠奈被告の犯行を咎めることなく生活を続けていた一家。弁護人が質問する。
弁護人「修被告は瑠奈被告が恐いと思ったことはないのですか」
修被告「思ったことないです」
弁護人「首の切断後も浩子被告は同居していました。浩子被告が危害を加えられると思ったことは」
修被告「一度もない」
弁護人「そう思わなかった理由は」
修被告「事件が起きる前も後も、本人から殺意が感じられなかったので」
むしろ、娘から殺意が感じられる瞬間が過去にはあったのだろうか——修被告の主張は少し引っかかる言葉がある。