倉庫内に保管されている政府の備蓄米(時事通信フォト)
全国のスーパーで販売されている米の平均価格が5kgあたり3892円(2月16日までの一週間、農林水産省調べ)まで上昇した。一年前は5kgあたり約2000円で、対前年同期比較で90%上昇した計算で、日本人の主食である「米」が足りず、価格が高止まりしている。1918年米騒動の前には買い占めなどの米穀投機が発生し、それがさらに庶民の怒りを買った。「令和の米騒動」でも投機目的の買い占めが発生していると言われるが、買われた米はどんなもので、どこに保管されているのか。ライターの宮添優氏がレポートする。
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「あなたたちが私たちを悪いというから、商品がマッタク売れないよ!どうするの?」
筆者の取材に対し、こうまくし立ててきたのは、群馬県南部在住のベトナム国籍の男性(40代)。男性が同郷の仲間数人と暮らす平屋の賃貸住宅の玄関脇には、群馬県産や茨城県産と書かれた米袋が何十と積み上がっている。しかし、袋に記載されるはずの生産地などの情報欄は空欄のまま。風湯で肌寒いとはいえ、居室から流れてくる暖房の空気も、米袋を直撃しているような状況だ。
これらの米は昨年秋から今年にかけて、仲間うちで日本国内の農家やブローカーを訪ねて買い集めた「新米(の玄米)」なのだという。玄関に積み上げられた米袋を見て「米の管理は適切なのか」と質問したところ、男性は血相を変えたのだ。
「うちのお米は怪しくない、ちゃんとしていますよ。日本のお米。あなたが来て、悪く言うから売れない!」(ベトナム人の男性)
仲間からの脅迫みたいなこともある
米価が急上昇し「令和の米騒動」という言葉が定着しつつある昨今。農業に関わる実績が全くない「ブローカー」などが買い占めていることが、今般の米不足の原因の一つ、と指摘する声も相次いでいる。一方、冒頭で紹介した事例を含め、実際に「米を貯め込んでいる」という複数の日本国内の事業者、日本在住の外国人に取材すると「高額転売」を狙った彼らの目論見は、実はことごとく外れている事もわかる。前出ベトナム人男性から「米の営業」を受けたという、埼玉県在住の飲食店経営の男性(60代)が振り返る。
「今年になって急に店に来て”お米あります、買ってくれ”とチラシを置いていった。そんなもん、いくら米が足りなくても、怪しくて買うわけがないでしょう(笑)。というか、ほとんどの飲食店は米屋や食料品の卸業者に年間を通してお願いをしているわけ。だから、多少の値上がりはあっても、米が入ってこないということはないし、訳のわからない業者に頼むわけがない。こちらも客商売だし、何より食べ物ですよ。食べ物を、怪しいところから買おうなんて、現代の日本人は思わないでしょう」(飲食店経営の男性)