永田被告の獄中手記。初めて犯罪に手を染めたのは中学1年生の時だという
空き巣の手口「詳しいやり方はYouTubeで見てください」
永田被告は2022年11月14日、神奈川県秦野市での空き巣事件を皮切りに、2023年1月20日に職務質問を受け逮捕されるまで立て続けに6件の事件を起こした。そのうち5件目の事件が、職務質問を受ける前日に東京・狛江市の住宅において90歳女性Aさんをバールで殴って死亡させた狛江事件である。
広域強盗の恐ろしさを世に知らしめたこの事件の実行役は永田被告を含め4名いる。当時19歳の大学生で、本事件ほか1件に関与した中西一晟被告(21)には懲役23年。中西被告の友人であり、本事件ほか2件に関与した加藤臣吾被告(26)には無期懲役。本事件のみの関わりでありながら、バールでAさんを殴打した張本人である野村広之被告(54)には無期懲役と、いずれも厳しい判決が言い渡されている。
公判で明らかになったところによれば、永田被告は2022年当時、石川県内で土木関係の仕事に従事していたが、競艇にのめり込み、消費者金融だけでなくヤミ金からも借金を作っていた。返済と競艇の軍資金を得るため、11月上旬、Twitter(現X)で「闇バイト」を検索。フィリピンの指示役らと繋がる。〈神奈川の一軒家 空き巣入ります。自宅現金1000万 またご連絡します〉とキムからテレグラムメッセージを受信し、その1週間後に他の共犯と事件を起こした。もともとは空き巣という話だったが、途中、指示役から「叩き」(強盗)に切り替えるよう指示を受けていたという。
「私は空き巣が初めてでやり方が分からず、キムさんに聞くと『詳しいやり方はYouTubeで見てください』と言われました。被害者宅に到着しましたが家の前を通ると、事前の情報にない軽自動車が停まっていました。それを見て、コンビニに移動してキムさんに報告すると、叩きに変えるように指示を受けました」(永田被告の証言・以下同)
指示役は、在宅を確認するために呼び鈴を鳴らし、応答があったら強盗に及ぶよう指示したという。実際、被告らが呼び鈴を鳴らすと在宅が確認できたため、強盗準備のため一旦コンビニに移動。住人を縛るためのガムテープを購入し、再び住宅の前に戻った。すると、
「先ほど停まっていた車がなくなってました。キムさんに報告すると『タタキから空き巣に切り替えましょう』と言われました。侵入に際して、キムさんとはテレグラムを通話状態にして常時指示を受けられるようにするため、ワイヤレスイヤホンを耳に入れて犯行に及びました」
一連の事件で指示役らは、空き巣よりも強盗を指示しようとする。ヒントのないまま闇雲に金品を探す空き巣よりも“効率が良い”からだという。この事件でも一度は強盗の準備を進めていたものの、その間に住人が外出したため、空き巣になった。永田被告は当時、空き巣については罪悪感を持っていなかったようだ。「今までの私は正直、窃盗は軽い罪だと思っていて、中学生の頃から常習的にやっていました。軽犯罪だと思っていて、この事件は反省の念がありませんでした」と振り返る。そしてひと月置かず、2022年12月5日、2件目の東京・中野区における強盗事件に参加した。