セレクションに集合したジャンボ軍団(後列左から金子、飯合、尾崎直道、健夫/撮影=太田真三)
寒さが少しずつ和らいでゴルフの季節が近づくなか、年を追うごとに「昔より飛ばない」と悩むゴルファーも多いはず。かつて、プロ通算113勝の尾崎将司(78)が率いて男子ツアーを席巻した“飛ばし屋集団”も、今は以前と全く違うスイングを身につけているという。ジャンボ軍団が「飛ばないゴルフ」で勝つ方法を解説──。
「70歳の声を聞いた途端、急に飛ばなくなっちゃったんだよ。こんなの初めてのことでさ。昔は深く考えずに黙って打つだけで飛んでいた。でも、最近は急に飛ばなくなって、色々と考えるようになったね」
そう話すのは、尾崎三兄弟の次男で国内ツアー通算15勝の実績を持つ“ジェット”こと尾崎健夫(71)だ。180cm・90kgの体躯から繰り出すドライバーは兄のジャンボを凌ぐ飛距離を誇り、300ヤード超えを連発していた。
その健夫が“年齢とともに飛距離が落ちる”というアマチュアのシニアゴルファーと同じ葛藤を吐露したのは、2月9日のこと。この日は女子のトッププロとして活躍する原英莉花(26)や西郷真央(23)を輩出した「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」のセレクションが行なわれていた。
会場となった千葉市内にある敷地1万坪の「ジャンボ軍団専用練習場」では、プロを目指す高校生や大学生ら25人が審査を受けたが、いつも試験官として立ち会うジャンボ尾崎が発熱のため欠席。代役として、三兄弟の次男・健夫、三男でツアー32勝の“ジョー”こと直道(68)、同11勝で賞金王経験者の飯合肇(70)、同6勝の金子柱憲(63)が顔を揃えていた。
1971年のプロデビュー後、圧倒的な飛距離を武器に優勝を重ねたジャンボのもとには、プロを目指す若手が住み込みで集まり、オフのトレーニングや練習ラウンドをともにした。全員が300ヤード級のロングヒッターで、飛ばし屋集団としてツアーを席巻。この日、顔を揃えた4人計64勝の軍団の主要メンバーは、1990年前後のツアーをジャンボとともに沸かせた面々だ。
現場では飯合が「これからは(後輩を)応援しなくちゃいけない立場」と話し、健夫は謙遜気味に「俺たちもシニアになってくたびれてきたしね」と応じて笑いを誘っていた。セレクション後の会見では近年のクラブ性能の向上にも話が及び、飯合が「今(の男子)は、飛距離が違いすぎるからどうやって教えていいかわからない」と呟き、健夫もうなずいていた。
日本を代表する飛ばし屋だった面々に似つかわしくない様子が気になり、会見終了後、「飛距離」について個別で話を聞いた。