圧倒的な飛距離でツアーを席巻したジャンボ三兄弟(写真/共同通信社)
“飛ばそうとしない”が大切
精神面も重要になると話したのは、尾崎三兄弟の末弟で賞金王2回の“ジョー”こと直道だ。173cm・68kgの体格は2人の兄から見劣りしたが、全身を使ったパワフルなスイングを武器にのし上がった。その直道は「今の俺は200(ヤード)ちょっとしか飛ばないよ」と笑いながらこう続けた。
「飛距離を求めにいくと体の負担になるが、体は思うように動かない。体を使えなくなるんだから、飛ばなくなって当然なんです。そこをどう克服していくかを考える。クラブ選択も重要で、2打目は(グリーンに)届くクラブを使えばいい」
残り150~160ヤードで、“昔なら7番アイアンで届いた”といった発想を捨てる。今の飛距離に応じた番手を素直に握るという考え方だ。
「あとは日々のストレッチだけは怠らないこと。体を鍛えるのは難しいが、維持するくらいはできる。ストレッチで可動域を維持すれば、急激には衰えない。俺はそう思ってやっていますよ」
健夫も言う。
「飛距離が落ちたと気にするから、“昔のように……”と気負って体を使って振りにいって、失敗を重ねてしまう。飛ばないことを気にしないのが大切だと思うよ」
飛距離自慢だった人ほど、ヘッドで飛ばそうと重いクラブを使いがちだが、かえってスコアを落とす結果となりかねない。「歳をとったら軽いクラブに変える。それだけで大分変わるよ」と健夫はアドバイスする。
少しずつ飛ばなくなるのはジャンボ軍団も同じ。直道は「どうやれば飛ぶのかと思うこと自体は、ゴルファーとして間違っていない。衰える自分を乗り越えるのもゴルフの面白さ。最近はそう考えてやっている」と話した。生涯続けられるスポーツだからこそ、スコア向上のための工夫も少しずつ変化していくということなのだろう。
※週刊ポスト2025年3月14日号