フランス凱旋門賞も経験、34年間の騎乗で夏のレースも冬レースも知りつくす蛯名正義氏
節目の勝利をあげてインタビューを受ける時、他のジョッキーが年齢に関係なく大勢出てきて祝福するようになりましたよね。あれはJRAから言われたわけでもないし、騎手会で話し合って決めたわけでもない。いつから誰が始めたかわからない、自然発生的なものです。プラカードもJRAが用意したものを騎手の1人が持つようになった。あそこに並んだために、自分のレースの集合時間に遅れて制裁をもらったジョッキーもいるぐらい、みんな大事に思っている場です。
僕が1000勝(2001年)した時はまだ独りでインタビューを受けたような記憶がありますが、2000勝(2012年)の時は、みんなに囲まれました。ちょっと照れくさいけれど、そういう記録がかかっていたことを、同業者として見ていてくれたのだと思うと、とてもうれしかったな、と思い出しますね。
昨年12月、岩田康誠騎手が土曜日の移動中にYouTubeを見ていたとかで騎乗停止になった時、クリストフ(ルメール)らが岩田騎手のネームが入ったパンツをはいてレースに臨んだのをご存じでしょうか。「彼を応援しました」とコメントしていましたが、クリストフも短期免許で来ている時なら、あんな行動をとったかどうかわかりません。ああ、日本のジョッキーになったんだなと感じました。行動自体には賛否があるかもしれませんが、騎手の一体感を示すエピソードではないでしょうか。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。この連載をベースにした小学館新書『調教師になったトップ・ジョッキー 2500勝騎手がたどりついた「競馬の真実」』が発売中。
※週刊ポスト2025年3月14日号