霞ヶ関の財務省。この前でたびたびデモが行われている(時事通信フォト)
自賠責は税金ではない
筆者はさまざまな媒体でときに「消えた6000億円」、ときに「借りパク」と書いてきた。もちろん私よりもっと前にこれを追及してきたメディアやジャーナリストがいる。ずっとみな書いてきた。国民もまた怒り続けた。
それでも、財務省は自賠責保険積立金を完済しない。後述するが完済は50年、100年先の話となる。筆者は生きていまい。多くの現役世代もそうか。これをまともな返済と呼べるのかはともかく、これが政府および財務省の姿勢である。
2024年12月、参議院本会議で石破茂首相は「着実に繰り戻す」とした。2024年度は補正予算と合わせて100億円返すことになったが、それでも完済は60年先の話である。これまでの年60億円ペースの返済ではそれこそ利息抜きでも100年かかる。
この質問に立った国民民主党・新緑風会の浜口誠議員は「自賠責は税金ではない。10年以内の繰り戻しを」と求めたがもっともな話で、税金でなくユーザーの積み立てた自賠責の金である。自賠責は強制保険、義務なのでみな入らなければならない。財務省はあれこれ複雑な経緯を並べ立てて弁解するが耳を揃えて返せば済む話だし、100年後に完済しますで誰が納得するだろう。ユーザー、ひいては国民が積み立てたものだ。
加藤勝信財務相も石破首相と同様に「一般会計からの繰り戻しを着実に進める」とした。また中野洋昌国交相も財務省に「繰り戻しをしっかりと求める」とした。「着実」「しっかり」は先のバブル紳士たちも使った詭弁である。
元を正せば1994年度に大蔵省が運輸省から1兆1200億円を借りた。すぐ返すはずが、いつのまにか1円も返さなくなった。第二次安倍内閣時代の麻生太郎財務大臣に至っては「返済拒否」。凄い、返さなくていいのだ。
これが自民党および財務省の姿勢であった。10年以上も財務省と国交省の「合意」で1円も返さない、それがまかり通って来た。国交大臣の座に居座る公明党もそうか。
2022年、鈴木俊一財務大臣はついに謝罪に追い込まれた。「申し訳ない」と財務大臣の口から国民に対して初めて明確な謝罪の言葉があった。しかし「1回で返すのは無理」として2018年度に23億2000万円を繰り戻した。
1年で23億2000万円の返済だと約260年かかる計算だが、ついこの前まで財務省は本当にこんな態度で6000億円を遠い未来まで完済するつもりがなかった。それどころか2023年4月から自賠責の賦課金を値上げした。
賦課金を値上げ幅は最大150円。極めて少額だが金額の問題ではない。