高級クラブにいた彼女を見初めて妻にしたという(写真/イメージマート)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、高級クラブのホステスから極道の妻となって極道的才覚を開花させた姐さんについてのエピソードについて。暴力団対策法施行からこの3月で33年──。今ではすぐに罪に問われるであろう姐さんの”伝説”について取材した。
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その人はヤクザ以上にヤクザな姐さんだった。彼女が表舞台にいたのは、昭和の大ヒット映画『極道の妻たち』のシリーズが上映されていた頃だ。
姐さんと組長の出会いはある高級クラブ。すらりとした体型にはっきりした目鼻立ちの彼女を、組長が見初めたことが始まりだった。組長と結婚し”姐”となった姐さんは、見様見真似でヤクザの仕事を覚えていく。まずは、組長が地上げした土地を建売用地として売り出した。用地はすぐに完売し姐さんは”不動産業”が面白くなったのか、次はホステス時代に培った人脈を使い、客だった男性から高級マンションを格安で買い取り、高値で転売。
当時のことを知る組員は、「ホステス時代の関係をネタに価格交渉をしていたようだ。本物の極道よろしく使えるネタはどんなものでも使っていたらしい」という。過去に親しい関係だったとはいえ、相手にとっては、姐という立場でバックに暴力団がついているというのは、それだけで無言の脅しになったのだろう。「ホステス時代の上客たちから、物件などを安く仕入れては転売していた」と組員は当時を振り返る。
極道の妻としての仕事は、組の大きさや組長の考え方によるところが大きい。大所帯の組であれば、自宅に部屋住みの若い衆がいることも多く、極妻は若い衆の生活態度や作法などにも気を配ることになる。組員が失態すれば後始末に手を貸したり、刑務所に入れば差し入れをすることもある。テキヤ系の組織があった頃は、自ら露店に立つ妻もいた。小さな組ならヤクザの妻といっても普通の主婦と変わりない。組内のことには口を挟まないのが基本だが、自分名義のクレジットカードを組長が使って一緒に逮捕された妻もいれば、シマ内でシノギの手伝いとして飲食店などを経営する妻もいる。組のシノギとは関係なく、自分の趣味でエステサロンやブティックやセレクトショップなどを経営している者もいる。
だが姐さんがやっていたことは、極道の妻の仕事というより極道に近かった。家の中のことはお手伝いさん、組長の世話は住み込みの若い衆任せになったが、極道的才覚で金儲けをする姐さんに組長は何も言わなかった。「言っても聞かなかったんだろう。下手に止めて出て行かれるより、自分の見える所ならと思ったのかもしれない」と組員は組長の気持ちを慮る。昭和の時代は、大企業の幹部の不祥事をネタに暴力団が企業をゆすったり、株主総会を暴力団まがいの総会屋が仕切ったりすることも多く、暴力団が大きな顔で幅を利かせていた時代だ。華やかであでやかな外見に磨きをかけ、姐さんもその波に乗って暴力団というバックをフルに活用していた。