多くの国が、売春目的での入国を禁止している(画像はイメージ)
数年間の入国禁止=永久的にアメリカに入れなくなる可能性
アメリカでは一部の地域を除き、ほぼ全土で売春は違法行為とされており、売春に関わった人は「犯罪者」となる。そのため、入国時や入国後に売春に関わったと認定されたら、入国拒否や強制送還となり、ケースによっては5年またはそれ以上の入国禁止期間がつく。
また、通常90日以内の観光や短期のビジネスを目的とした渡米の場合は、「ESTA(エスタ)」の取得によってビザなしで入国することができるが、一度売春の条例が適用されると、一生涯エスタでの入国ができなくなる。つまり入国禁止期間が経過した後も、数日間の滞在であってもビザの取得が必須になり、またその時にビザを取得できる保証もない。数年間の入国禁止=永久的に、アメリカに入れなくなる可能性があるとも言える。
こうしたことから、売春目的の女性たちは、慣れている人ほど、入国対策としてあらかじめスマホ内のデータを消したり、持ち物を精査するなどの準備をする。だが海外に出稼ぎに行く動きが広がり、出稼ぎ初心者の渡航も増えるなかで、対策がおろそかなまま入国しようとし、ストップをかけられる例が一定数あるようだ。「仕事は?」と聞かれて、正直に「キャバクラ勤務です」と答えたことで、売春を伴う職業とみなされ、入国できなかった例もある。
ビザ問題に詳しい弁護士の上野潤さん(イデア・パートナーズ)は言う。
「日本では、水商売と性風俗の仕事とが区別されていますが、アメリカでは“売春か、そうでないか”という見方になります。つまり、“対価を目的に関係を持つかどうか”でしか見ません。どこまで何を疑うかは、入国審査官や移民官、警察官にも、それぞれ個々の基準があり、人によるところも大きい。キャバクラ勤務=売春婦だと思っている審査官も普通にいます。“対価を目的に関係を持つ行為”の解釈が、日本より広い傾向にあるのは間違いないでしょう」
(第2回に続く)
松岡かすみ・著『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新聞出版)