海外へ“出稼ぎ”に行く女性たち(イメージ)
近年、日本人女性が風俗嬢として海外に“出稼ぎ”に行くケースが増えている。性風俗業の海外出稼ぎは違法行為であることが多く、現地ではトラブルも多発。ジャーナリストの松岡かすみ氏は、『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新聞出版)で、性風俗業の違法海外出稼ぎの実体験のみならず、出稼ぎがはらむリスクやそこに至る社会的要因などを多方面から取材。現代日本社会全体で考えるべき問題を提起している。
果たして彼女らは一体どのようにして現地で“仕事”をしているのか──。
松岡氏は、海外へ出稼ぎに行っているというマリエさん(仮名・41歳)を取材。マリエさんは“ある人物”を参考にして、“海外出稼ぎ新ビジネス”を行っていると言う。出稼ぎ風俗嬢の最新事情を明かす。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第2回。第1回を読む】
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憧れの同業者からノウハウを学んだ
出稼ぎ方法は、マリエさんが「最も影響を受けた人物であり、尊敬する人物」として名前を挙げる、国際的に有名なセックスワーカーの女性から学んだ。過去に雑誌『Newsweek』でも紹介されたことのある、影響力の大きい女性だ。
インスタグラムのフォロワー数は11万人超え。ホームページやインスタグラムは、まるでファッション雑誌『VOGUE』のようなハイエンドな世界観で、写真も美しい。「エロ」ではなく「セクシー」な雰囲気。そして、ただセクシーなだけではなく、ファッショナブルで洗練された、どこか高貴な印象。徹底したブランディングで独自の世界観を作り出している。
「彼女は、各国のセックスワーカーの中でも、圧倒的にマーケティングが上手くて、そのセンセーショナルな雰囲気に注目していました。ある時、彼女が同業者に対し、ツアーを組んで客を募る稼ぎ方を教える“ハウツー・ツアー”を売り出したんです。
そこで彼女にコンタクトを取り、その時彼女が滞在していたシンガポールまで会いに行きました」
初めて会った時は衝撃だった。空港に到着すると、専属のドライバーがマリエさんの名前を書いたウェルカムボードを持って立っており、外には黒塗りの専用車が待ち構えている。向かった先は、彼女が滞在している5つ星ホテルのスイートルーム。そこで彼女と実際に会って、富裕層を相手に仕事をするのに必要な姿勢を学んだという。
「彼女は3日間で700万円を稼ぐ人で、仕事に対する意識も稼ぎ方も、日本人のそれと大きく違って憧れました。彼女は自分にとてつもない自信を持っていて、全く自分を疑っていない。それが彼女の“あり方”から見て取れました。例えば、日本の風俗嬢だと、お客から大金をもらったら、それに見合ったサービスを提供しないといけないと思って必死になると思うんです。
でも彼女は、 『私と過ごす時間そのものに価値がある』と本気で思っているから、大金を払った客の前で、優雅にお茶を飲んだりできる。普段から自分のために人が動くことが当たり前な富裕層の客ほど、それを面白がるしリピーターになる。私も彼女のように、仕事も収入も成功したいと思ったし、もっと広い視野でこの仕事をしてみたいと思いました」
この女性の影響もあり、マリエさんは富裕層の客を獲得するための方法の一つとして、ブランディングを徹底してきた。ファッショナブルで、ハイエンドな世界観のホームページやSNS。昔からモードファッション雑誌や芸術が好きで、自分の中に自然とそうした美意識が根付いていた部分もある。
ただ、先の彼女と大きく異なるのは、ブログやツイッターと同じく、自分の顔がわかるような写真は決して載せないこと。足元や手元だけの写真や後ろ姿、横顔など、スレンダーで引き締まった身体の持ち主なことや、容姿が美しいことは想像できるものの、「一体どんな人なんだろう」と思わせる写真を載せる。客の想像力を掻き立てる仕掛けだ。