海外で年間約4000万円を稼ぐ女性もいるという(写真はイメージマート)
「行ってみたら意外と面白かったから、今も続けてます」──近年、日本から海外へと出稼ぎに行く性風俗業の女性が増加しているという。冒頭のセリフは、出稼ぎ歴1年強になるキョウコさん(仮名・28歳)のもので、リスクが高く違法な“性風俗業での海外出稼ぎ”のハードルが下がっていると思わせる発言だ。彼女はこれまで10か国以上を訪れ、年間約4000万円を稼いだという。
それには多分に海外の性風俗業で希少な“日本人ブランド”が功を奏した。しかしながら“売り手市場”だったマーケットにある“異変”が起きているという。
ジャーナリスト・松岡かすみ氏の著書『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新聞出版)では、海外出稼ぎ風俗嬢の実体験のみならず、出稼ぎがはらむリスクやそこに至る社会的要因などを多方面から取材。現代日本社会全体で考えるべき問題を提起している。松岡氏が、出稼ぎ日本人女性の実態を聞いた。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第4回。第1回を読む】
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日本人女性の数が増え、質が下がった
いろいろな国を転々とするなかで、最近、日本人女性の出稼ぎがぐっと増えたと感じている。例えば1年前にキョウコさんが働いたオーストラリアの店では、当時は日本人が4~5人だったのが、最近は13人など倍以上に増えているらしい。
「〈海外出稼ぎが儲かる〉というツイートが、エージェントやスカウトからたくさん出回っているから、それを見て出稼ぎに行く女の子が増えてるんだと思います。エージェントは今、大して可愛くない子でも、どんどん(海外に)飛ばしてますよ。そのうち日本人の女の子が溢れかえって稼げなくなるのが目に見えていて、本当に迷惑だし困る。すでに“日本人ブランド”が崩れてきているし、いろんな意味で質が落ちてきていると思います」
キョウコさんが“日本人ブランド”と表現する背景には、こんな光景がある。
海外の店で、店の女性たちが客の前にずらっと並んで品定めされる、「ショータイム」と呼ばれる時間。女性たちとひと時を共にする金額は、容姿にも左右されるものの、女性の国籍によって大きく異なってくることを目の当たりにした。
「アジア系だと、日本が上位で、その次に韓国、中国。最安値がインドネシアとかベトナム。整形しているかどうかも金額に関わってきますが、それ以上に国籍が物を言うんだと知りました。
海外の客から見ると、日本人はサービスが良いとか、AVみたいなプレイができるみたいな幻想もあって、人気が高いみたいです。でも最近は、日本人でも質の低い女の子が増えてきて、ちょっと変わってきてるんです」
安売り、持ち逃げ
キョウコさんの言う「質の低い女の子」とは、自分を“安売り”してしまったり、客から支払われた報酬を店に渡す前に持ち逃げしたりする女性たちのことだ。本来はオプションとして別料金をもらうはずのサービスを、格安でOKにしたり、なかには無料で良しとしたりする女性が出てきているらしい。これが続くと、たちまち日本人女性の料金の相場が崩れ、安売りせざるを得ない流れになってもおかしくないと、キョウコさんは懸念している。
出稼ぎに行く女性が増えるなか、客から支払われた報酬を持ち逃げする例も増えているという。店で働く場合、客から支払われた金額は全てが女性の取り分になるわけではなく、店にもお金を渡さなくてはならない。それをわかっていながら全額を持ち逃げする女性が、日本人でも増えていると話す。
「つい先日も、お金を持ち逃げした日本人の女の子の写真が出回っていました。こういう例が続くと、日本人ブランドが崩れてしまうし、頑張っても稼ぎにくくなる。考えなしにそういう行動をしてしまう、頭の悪い子の渡航が増えているのが困るんです」
1年のほとんどを海外で過ごし、日本で過ごす期間は3か月ほどという、出稼ぎが中心の現在の生活。だがこの生活は、半年以内で辞めるつもりだと口にする。お金をつぎ込んできたホストが、「半年以内にホストクラブを辞める」と話しているためだ。
「だから私もホスト狂いを卒業しようかなと。まあ、彼はホストを辞めるって言ってるけど、そんな簡単に辞められるわけないとも思ってる」