2月の襲名披露大相撲や部屋開きで披露したが、「まだ不安がある」と土俵入りの所作を何度も確認していた
新横綱が春場所だというのも豊昇龍にとっては追い風となる。立浪部屋が18年前から大阪宿舎にしている『住吉大社』は、横綱の起源となる住吉相撲会が開催されていたとして毎年、横綱奉納土俵入りが行なわれている。
「初めて番付に載ったのがこの住吉さんの宿舎だった。序ノ口の場所前に境内にある社をすべてお参りして“優勝”をお願いしたんだけど、6勝1敗で終わった(苦笑)。でも横綱になって帰ってこられて、土俵入りができることがうれしい」
2000人が集まった横綱奉納土俵入りの控室では、顔見知りの住吉大社関係者の挨拶を次々に受け笑顔が絶えなかった。この笑顔が余裕にさえ見える。平戸海と明生を従えての奉納土俵入りを無事終えると、「恩返しができてうれしい」とホッとした表情を見せた。
そして、ひとり横綱について「横綱は俺しかいないんだからね。責任を感じるが、1日1番をしっかり取ることしか考えていない」と言い切った。
最後に横綱として並んだ叔父(朝青龍)と比較されることについて聞いてみると、「正直嬉しくはない。悪口じゃなく、オレは俺。しっかり頑張りたい」と一言。
新横綱の土俵は始まったばかりだ。
取材・文/鵜飼克郎 撮影/太田真三
※週刊ポスト2025年3月21日号