「山本人気だけ」の限界を突破できるか
とはいえ拡大が続くとは限らない。議席増に「実績」で応えなければ、期待感はしぼみかねない。
持論の消費税廃止を進めようにも、未だキャスティングボートは握っていない。維新・国民・共産は「消費減税」を公約に掲げたが、3党とも国会では言及していない。
インタビューで山本氏は「減税で(各党と)力を合わせてやれるんだったら迫りたい」と述べたものの、過去の過激路線の印象が強いれいわには、他党やその支持者の間に忌避感が強いのも事実だ。
結党以来の支持者たちからは喝采を浴びる山本流が、中規模政党に脱皮するには、足枷となりうるのである。
この点を聞くと、山本氏は「ひとり牛歩は与野党の茶番を国民に知らせるために意味はあった」と語る一方、「私たちの方針は、これまでの、“ならぬもの(法案)は必ず牛歩”という運用ではないです」とも述べた。これは注目に値する。
また、地方組織づくりも課題だ。選挙ごとにボランティアを集める今の形態では、山本人気でリードできる衆参の比例区ならばなんとかなる。しかし県議選のように、広域でのドブ板が左右する選挙では限界がある。実際、選挙区の現有議席は参院東京の山本氏のみで、都道府県議はゼロだ。
山本氏も「県議会となるとかなりハードルが上がる。やっぱり現状は(50議席超の)市町村議会議員をさらに固めていく必要がある」と認めた。
今夏の都議選では候補を擁立し、参院選(改選2)では7議席獲得を目標に定める。非改選と合わせた現有5議席を10に倍化させるという、追い風が吹く今だからこその野心的な勝敗ラインだ。
さらに議席が増えれば存在感は高まるが、議会対策や政策準備に時間と労力を奪われる。有権者との接点となる草の根運動が弱まれば、この党の命脈にかかわる。運動と議会の新しいバランスを創造し、政治を動かせるのか。分水嶺の参院選まで4か月を切った。
■前編記事《れいわ新選組・山本太郎氏、ロスジェネと30代を中心に政界の想定を超えた支持「時代が太郎さんに追いついてきた」「特定の支持母体を持たないのが魅力」…支持者たちの思い》から読む
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)。
※週刊ポスト2025年3月21日号