「れいわ新選組」の戦略とは(山本太郎氏/時事通信フォト)
昨年10月の衆院選で議席3倍増となる9人を当選させたばかりか、その後も支持を拡大している山本太郎・代表率いる「れいわ新選組」。産経新聞が2月下旬に行なった世論調査では30代の政党支持率は14.4%と、11.2%の自民党をも上回った。「ひとり牛歩」など国会での奇抜な行動ゆえに“イロモノ”と見られてきたれいわ新選組に、一体何が起きているのか。今年1月末に、動画番組(文藝春秋PLUS)で山本代表にインタビューをしたノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
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得票の急伸ぶりでは国民民主党のSNS選挙が注目されたが、れいわの戦略はこれとも異なる。
インタビューで山本氏は「党勢拡大できたのは、SNSのおかげとは思わない」と述べた。主戦場はリアルの遭遇であり、顔を合わせ、直接熱を伝えてきたからだ、と。伝統的なドブ板選挙に通じる流儀を重んじている。
れいわは2年前から、毎週のように全国各地の街頭でデモを主催。と同時に、これとセットで「おしゃべり会」と称する対話集会も催してきた。例えばこの2月だけでも埼玉から福岡まで7府県で行なう力の入れようだ。
デモでは増税反対や直接給付をラップ調で唱えつつ練り歩く。おしゃべり会では、聴衆にマイクを回して疑問に思うことを聞き、その都度山本氏が答える一問一答形式で、1時間半にも及ぶ。
答える際に山本氏は、モニターに経済の現状を示すグラフやポンチ絵を次々と映して説明していた。首相を「間抜け」とこき下ろす国会活動を「動」とすれば、おしゃべり会の説明は「静」。この時間を、この党の最大の福音と受け止める支持者も多く、東京都の50代の女性は「みんなで学んで国を動かそうというスタンスがいい。わかると政治って面白いんですよね」と話した。
ただ、「アンチ大歓迎」をうたう以上、集まるのは支持者だけでない。
2月11日、京都の回で挙手した中年の女性は「財務省は日本のディープステートで、政財界やメディアも操られている。日本人ではないとも聞きます」と問うた。
日頃、財務省には舌鋒鋭い山本氏だが、これに便乗することも、逆に陰謀論と切り捨てることもせず、こう答えた。
「日本を守る意思を持って、日本人がしっかりしていれば、外国勢力があろうがなかろうが介入を防げる。差別につながる言説には乗れないです」
さらに「政策がおかしいのは外国のせいではなく、政治に関心を持たない日本人のせいですよ」と続け、2011年の原発事故まで、自分も国にお任せのバカな一人だった、そう知って動き出したのだ、と結んだ。