小松が初めてインティマシー・コーディネートに携わった映画『月下香』(©︎「月下香」製作委員会)
こんな時に誰か、間に入ってくれる人がいればいいのに──。そんなもやもやする思いが募る中で、40代に入って、主演作品『連結部分は電車が揺れる 妻の顔にもどれない』(内田春菊監督・2013年)で忘れられないできごとがあった。
「内田春菊さんは漫画家さんなので、最初にしっかり構成を練って絵コンテを見せてくださったんです。撮影の流れがわかれば自分の演技プランを伝えて、事前にすり合わせることもできる。“あぁ、この過程があれば、こんなにすっきりいくのに”と衝撃でした。今のところ、私が肌をさらけ出した最後の作品となるのですが、不安なく撮影に臨めて、いい思い出として残っています。この現場を経て、セクシーなシーンではこれが通常であってほしいと、願わずにはいられませんでしたね」
その約10年後に『月下香』に携わる頃には、役者を取り巻く環境も変わった。
「近年、映像作品の制作現場で役者を守る『インティマシー・コーディネーター』の存在が日本でも知られるようになって、“これだ!”と積年の悩みに解決策が見えました。『月下香』の制作にも入ってもらおうという話が出て、自分が所属する事務所の制作で出演する予定もあったので、『私に任せてもらえませんか』と手を挙げました。演じた経験があるほうが監督にもキャストの意見を伝えやすいでしょうし、役者さんには演技プランの相談に乗れる。自分が役に立てると思ったんです」
ベッドシーンの撮影では知らない人が現場に増える
主人公の人妻・亜美を演じる清瀬汐希は、本作で初めてセクシーな作品に挑んだ。
「私は女優のお仕事をする前にすべてをさらけ出す写真集も出していて、映像で肌を見せることに躊躇はありませんでした。ですが、すべてが初めての清瀬さんからはとても緊張が伝わってきて。彼女が撮影に集中できるように、守られた環境を整えてあげたいと考えました。まずは、撮影の場所に最小限しか人を入れないことを徹底。ベッドシーンの撮影現場ではなぜか、そのシーンだけ知らない人が増えることがあるんですよ(苦笑)」
そして、小松自身が求めていた「間に入ってくれる人」に徹した。