ヌード写真を特典とうたう、追悼アルバムの紹介ページ(ニューセンチュリーレコードのHPより)
プライバシー権や人格権の侵害
事態を複雑にしているのは、八代さんが若い頃から複数のレコード会社や所属事務所を渡り歩いてきたことだ。「テイチク」から「センチュリーレコード」に移った後、N氏と決裂した八代さんは「日本コロムビア」に移籍しているが、N氏との間で《すべてを一任する》という旨の念書を交わしていたとの話もある。
八代さんも、トラブルが起きることを予見していたのだろうか。生前、自分の身に何かあったときのために、亡くなった後のことを顧問弁護士に相談していたという。
「特に権利関係のことをきちんとしておきたいと考えていたようです。葬儀やお別れ会のこと、お墓のことに至るまで、八代さんはすべてご自分で準備されていました。遺言書も残されていて、そこには個人事務所を解散することや、八代さんが所有していた土地や建物を会社に贈与することなども書かれていたそうです」(八代さんの知人)
八代さんは目黒区の約70坪の土地に、地上4階地下1階建ての事務所兼自宅の物件を所有していた。2004年に建てられた当時「5億円豪邸」と報じられたその物件は、八代さんの死後、遺言に従って不動産会社に売却されている。
「売却益は、スタッフの退職金や法人の解散にかかわる必要経費などに充てられたということです。『ミリオン企画』を解散した後、社長だった大野さんが新たに八代さんの権利関係の会社を立ち上げたのも彼女の遺志に従ってのこと。保護猫の愛護活動に熱心だった八代さんの愛猫たちも、大野さんの会社で面倒を見ているそうです」(前出・八代さんの知人)
遺族の許可なく、故人のヌード写真を頒布することは法に触れる可能性があるという。福地国際特許事務所の弁理士、福地武雄さんが解説する。
「亡くなったアーティストの写真を含む追悼アルバムを遺族や相続人の同意がなく無断で販売する行為は、肖像権やパブリシティー権の侵害に該当する可能性があります。また、写真の著作権が撮影者にあっても、ヌード写真という性質上、プライバシー権や人格権の侵害、名誉毀損にあたる可能性がある。仮に遺族が異議を唱えた場合、販売の差し止めや損害賠償を請求されることもあります」
今回、八代さんに起こったトラブルは決して他人事ではない。若気の至りで撮影した秘密の写真が、長い年月を経て、第三者の手に渡ったり、SNSなどに流出する危険は誰にでも起こり得ることだ。
死後にそのようなトラブルが起きた場合、遺族は二重の苦しみに直面することになる。八代さんに子供はなく、かつて都内で「八代」という炉端焼き店を経営していた弟とも音信不通の状態が続いていたが、故郷には血を分けた親族がいる。自分にかかわった人たちには「けんかをせず、仲よくしてほしい」と願っていた八代さん。天国で今回の騒動をどんな思いで見つめているのだろうか。
(了。前編を読む)
※女性セブン2025年3月27日・4月3日号