39度目の甲子園で戦った明徳義塾・馬淵史郎監督(写真/産経新聞社)
高知の明徳義塾・馬淵史郎監督(69)の敗戦後のお立ち台インタビューは、まるで経験豊富な僧侶の説法を聞いているようだ。自身の采配をウイットに富んだ解説で記者を笑わせ、敗因についてはとうとうと語る。明暗をわけたプレーを明確に指摘し、キーマンをはっきりと名指ししながらも、厳しくも温かい視線と言葉を教え子に送って法話は終わる。「敗軍の将、兵を語らず」ではなく、百戦錬磨の老将の場合は「敗軍の将、兵を語る」だ。
報道陣への“ちょっとしたクレーム”
馬淵監督にとって39回目の甲子園となった第97回センバツは、初日の第3試合に1回戦が組まれ、前年王者にして優勝候補の一角である健大高崎(群馬)と対戦した。
相手には世代ナンバーワンの呼び声が高いMAX158キロの右腕・石垣元気がいる。しかし、組み合わせ抽選会後、石垣が左脇腹の肉離れを起こしているという情報が馬淵監督に入る。試合前日の開会式リハーサル後、馬淵監督はさっそく「優勝戦線を狙うならば休ませたほうがいい」と、健大高崎の青柳博文監督に対し、牽制とも口撃とも受け取れる言葉を発した。
試合当日。健大高崎の先発は背番号「10」の左腕・下重賢慎だった。
「選手には100%、先発は下重君だと伝えていました。(試合の)4、5日前に肉離れでしょ? 野手ならまだしも、投手は難しいだろう、と。ただ、拍子抜けはしたんですよ。3月7日に組み合わせが決まってから、高知で150キロぐらいのボールを打ち返す練習をしていましたから。13日にケガしたことを耳にして、急遽、左(投手の下重)を打つ練習をしたんですけど、健大高崎と練習試合をした相手校から情報を集めると、『下重君のほうが打ちにくい』と口を揃えるんですよ。とにかくチェンジアップ系のボールがやっかいだ、と。実際に苦しめられましたよね」
試合前日に「休ませたほうがいい」と牽制したことについては、ちょっとしたクレームを報道陣に入れた。
「(センバツを盛り上げる)ネタにされて、頭にきているんですよ」