大谷の伝説と秘密とは(写真/AFLO)
昨シーズン、54本塁打・59盗塁を記録し、メジャー史上初の「50‐50」を達成したドジャースの大谷翔平選手(30)。大谷選手はいまや超一流のメジャーリーガーだ。今シーズンは投打の「二刀流」復活にも期待がかかる。彼はなぜ、ここまでの頂に上り詰めたのか──。
臨床スポーツ心理学者の児玉光雄氏が注目するのは、“球場外”での野球への真摯な姿勢だ。
例えば、グローブの寄贈もその一つ。2023年12月から2024年3月にかけて、日本全国の小学校約2万校に約6万個のジュニア用野球グローブの寄贈したことは記憶に新しい。一見、自身の活躍とは関係ないように思えるが、実はこうした大谷選手の行動にこそ“異次元の活躍”の原動力が隠されているようだ。
児玉氏が「パフォーマンス心理学」の観点から大谷選手の思考・行動パターンを分析し、仕事への活かし方を綴った『大谷翔平に学ぶポジティブ思考で運命を拓く力』(双葉社)。本書より、大谷選手のモチベーションと決断法をお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回の第1回】
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ミシガン大学の心理学者エイミー・ルゼスニュースキー博士は、仕事には3種類あるといいます。
【1】「義務」としての仕事
【2】「出世の道具」としての仕事
【3】「天職」としての仕事
「義務」としての仕事をする人は、職場に行きたいから行くのではなく、行かなければならないから行くというスタンスです。「金銭報酬と引き換えに自分の時間を与えるのが仕事」と割り切っていて、与えられた職務は粛々とこなすのですが、仕事そのものに幸福を感じることは少なくなります。
一方、仕事を「出世の道具」と考えている人は、他の誰よりも金銭、名誉、そして権力を獲得することを人生の目標にしています。物欲の達成によって成功を定義し、他人からの賞賛を受けることに快感を抱きます。多くの場合、成功者と呼ばれるのは、このタイプの人間です。
そして「天職」の仕事をする人は、それに没頭していることが楽しくて仕方がないタイプです。ときにはそれが「出世の道具」とダブることもありますが、結果的に金銭や名誉を得ても、それは究極の目的ではありません。もちろん、大谷選手はこの「天職」のカテゴリーに属する人間です。
「僕にとっては、好きなことを仕事にしている楽しさが一番です。だから、自分が意識高く野球に取り組んでいるとはあまり思っていません。でも、取り組んでいる時間、考えている時間をなるべく長くしたいと思っています。ほかの人が1日24時間のうちどれぐらいを野球と向き合えているかは分からないのですが、それに負けないように自分自身がやりたいことに向けられる時間を長く取るようにしています」(CM「セールスフォース」)
「好きなこと」に対するモチベーションは何よりも強烈で、持続性も最高レベルです。好きな野球に、桁違いの向上心で取り組んだことが、大谷選手を偉大なメジャーリーガーに育てたことは論を俟たないでしょう。
もう一つ、仕事へのモチベーションとしてぜひ覚えておいてほしいのが、人や社会に貢献したいという欲求です。
自己啓発における世界的権威のアンソニー・ロビンズはこう語っています。
「力(パワー)というものは、世の中に貢献したいという思いの強さに正比例して、与えられる」(『自分を超える法』ピーター・セージ/著、駒場美紀・相馬一進/訳〈ダイヤモンド社〉
大谷選手が全国の小学校にグローブを寄贈したことは記憶に新しいところです。大好きな野球を通じて、社会に役立ちたい──。大谷選手は「誰かのために」を優先し、そのために行動を起こすことを躊躇しません。
大谷選手はこうも語っています。
「野球が好きで、うまくなりたい一心でやっているのが野球少年なら、僕は昔からそういうところは変わりません」(『不可能を可能にする 大谷翔平120の思考』大谷翔平〈ぴあ〉)
「永遠の野球少年」の進化には、これからも目が離せそうにありません。