ライフ

佐久間良子さん『ふりかえれば日々良日』インタビュー「いろいろな作品に出させていただいて、そのご褒美としていい作品に巡り合った」

【書評】『ふりかえれば日々良日』佐久間良子/小学館/1870円

【書評】『ふりかえれば日々良日』佐久間良子/小学館/1870円

【著者インタビュー】佐久間良子さん/『ふりかえれば日々良日』/小学館/1870円

【本の内容】
 佐久間さんは「はじめに──これまでと、これからも」で自身の人生を振り返り、こう綴っている。《その道のりは、決して平坦ではありませんでした。山あり谷あり、私の人生は紆余曲折の連続でした。離婚もしました。人の裏切りにも遭いました。仕事に追われる日々でしたが、どんな時も二人の子どもの存在がまさに私の命そのものであり、私の生きる全てでした》。その率直で、時にユーモアを交えた筆致が魅力的。後悔や憎悪の念ではなく、良いことも悪いことも自分を成長させてくれた出来事として捉える恬淡とした生き方が、人生を楽しむコツと伝わる。

帝国劇場の舞台に立つのは二十数年ぶりだった

 取材の前日は、建て替えのためにしばらく閉館する帝国劇場の最終公演の日にあたっていた。劇場にゆかりの深い名優たちがカーテンコールで登場し、その中に、佐久間さんの姿もあった。

「帝劇の舞台に立つのは二十数年ぶりかしら。本当に懐かしかった。毎年のように主役をやらせていただいていたので、舞台の隅々までよく分かっていました。どこに立てばいいのか。袖からどう出ていって、せりはどこにあるか」(佐久間さん、以下「」内同)

 東映の人気女優として映画の第一線で活躍していた佐久間さんの初舞台は1969年、三島由紀夫原作の『春の雪』(芸術座)のヒロインで、演出の菊田一夫からの指名だった。

「映画が忙しくて、私は舞台を見る機会がそれまでほとんどなかったんです。菊田先生がどうしてもとおっしゃってくださって、それじゃあ挑戦してみようという気持ちになりました」

『春の雪』は4カ月のロングランになる大ヒットで、それから佐久間さんは、切れ目なく帝劇をはじめとする大舞台に立つことになる。

『鹿鳴館』『唐人お吉』『細雪』『長崎ぶらぶら節』など数々の大作の主役をつとめた。10台近いバスが帝劇に横付けされ、1900人入る客席が、昼夜2回公演とも満員になった。

『ふりかえれば日々良日』は、佐久間さんの初めての著書である。

「最近はどういう風に過ごしているかを書いてほしいというお話だったんですけど、かなりしっかりこれまでの人生をふりかえる内容になってしまいました」

 高校生のときに高校の先輩にあたる女優に誘われて東映の運動会を見学に行き、熱心な勧誘を受ける。東映ニューフェイスとして受験することになり、水着審査を拒否するも第4期生として「補欠」入社。映画に出始めるとたちまち引っ張りだこになった。

「私の名前をたくさんの皆様に覚えていただこうと、会社がどんどん役を与えたんです。1年に15、16本は撮りました。京都の時代劇にも出ましたから、夜行列車で8時間ぐらいかけて京都まで行って、朝着いて車で太秦の撮影所に行き、時代劇の扮装をして先輩の方々のお相手をして、2日か3日でまた東京に引き返すんですから。寝る暇もなかったですよ」

 よく体を壊さなかったと思う。「がまん強いんですよ、私」という佐久間さん。男性主役の映画しかなかった当時の東映で、富島健夫原作の『雪の記憶』を映画にしたいと会社に直訴し、2年がかりで実現(タイトルは『故郷は緑なりき』)させたこともある。

 映画の代表作とも言える『五番町夕霧楼』と『越後つついし親不知』は、どちらも水上勉の小説が原作で、撮影された時期も近いが、「五番町」の田坂具隆監督と、「越後」の今井正監督との思い出が、とても率直に、忌憚なく描かれていて面白い。

「田坂監督は大変立派な温かいかた。人間的にも教えていただくことが多い監督で尊敬していました。厳しさのなかに人情味があって、役者もスタッフも傾倒していましたね」

『五番町夕霧楼』で濡れ場を演じることになった佐久間さんに対し、田坂監督は、「少女が美しい蝶々を追いかけながら、土手を駆けていく。するとだんだんに息遣いが荒くなる、そんな情景を思い浮かべて演じてみてください」と手紙に書いて渡したという。
「役者の心情を重んじてくださる先生でした」

関連記事

トピックス

フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
新年度も順調に仕事を増やし続けている森香澄
《各方面から引っ張りだこ》森香澄、“あざとかわいい”だけじゃない「実はすごいアナウンス力」、「SNSの使い方はピカイチ」
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン