蛯名正義氏がジョッキーになりたいと思ったきっかけとは
1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、ジョッキーになりたいと思ったきっかけについてお届けする。
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最近はあまりやっていませんが、ボートレーサーに知り合いがいて、たまにレースを見たり買ったりすることがあります。競艇は、内側の1号艇が有利と言われていますが、コースによってはカーブがきつすぎて、逆に不利なこともある。だからといって外がいいのか、というのも違う。1号艇が4回続くこともあれば、1、2、3、4、5と順番に出ることもある。確率的にはありえないような話だけど、「嘘でしょ!」っていうぐらい同じ買い目が続けて出たりする。わずか6艇なのにセオリーはないんですよね。だから面白くて夢中になる人がいるのだと思います。
さて、競馬の話をしましょう。僕がジョッキーになりたいと思ったきっかけは、まだ5歳だった時、今から約半世紀も前の菊花賞のレースを見た日にさかのぼります。緑色のメンコをつけた人気薄のグリーングラスという馬が、するするとインコースを進んで見事1着。競馬が好きだったオヤジがテレビの競馬中継を観ていて、その隣で一緒になって見入っていました。その時には漠然と、ジョッキーという職業があるんだなと思った程度でしたが、いつの間にか小学生の頃は毎週末テレビで観る競馬中継に夢中になっていました。気がつくと、グリーングラスのような緑色のメンコの馬は走っていないかな、なんて探したりもしていました(笑)。
競馬ファンの皆さんの楽しみ方も千人千色ではないでしょうか。面白い馬名だ、毛色がきれい、血統が興味深い、競走成績が素晴らしい、持ちタイムや調教時計が優秀、ジョッキーや調教師、厩舎のスタッフが素敵(?)等々。初心者が顔が可愛いからと馬券を買ったら、本当に勝ってしまったということもある。
どのアプローチが正しいかなんて誰もジャッジすることはできません。だからこそ競馬の人気も長く続いているのでしょう。