ユニクロ老人とレオン老人

 わたしが考える、現代のじいさんの典型的な姿はこれである。

 キャップをかぶり、シャツを外にだらしなく垂らし(だらしない、という言葉は死んだ?)、半ズボンにスニーカーを履いている。
加えて、リュックを背負うか(しかしリュック派は意外と少ない)、肩からポシェットかバッグを下げるか、ボディバッグかウエストバッグを装着している。
これで、現代じいさんのでき上がりである。

 バリエーションはいろいろある。

 キャップも野球帽か簡素なもの、シャツもTシャツか、柄シャツか、ポロシャツか、さまざま。ふつうのズボンやジーパンもある。スニーカーもブランドものから、廉価なものまで。
こちらは、ユニクロ派かワークマン派だといっていい。

 その多くの老人は、いまはこうよ、と家族に勧められたか、そうかいまはこれが流行っているのかと、自分の趣味趣向を取り入れたかのじいさんスタイルである。
この質とスタイルが典型的だといっていい。

 恥ずかしながら、これはわたし自身の姿でもある。

 服装に金をかけるのは、根本的にばかばかしい、と思っている。基本的にユニクロかワークマンで十分である。ただそのなかでも好みがあって、わたしが好きなのは柄も色もシンプルなものだ。それならとくに文句はない。

 ところがなかには、おれは一味違うぞと、髪の先からつま先まで、高価なもので決めまくり、カッコいいじいさん、イケてるじいさんを意識している連中がいる。

 こちらは、いわばレオン派である。

 ジローラモが表紙の雑誌『LEON』を読んでいるかどうかは知らないが、カッコつけているじいさんをとりあえずレオン派と呼んでおく。
もちろん、少数である。
わたしはこの一派をよく知らないから、服装の特徴を詳しくいうことができない。

 それでパス。

 これより、もっと少数派がいる。

 ヒップホップじいさんだ。

 これはひとり見かけた。ごついヘッドセットを着け、でかいスニーカーを履いている。やめればいいのに。
何派でもいいが(ほとんどはユニクロ老人)、こんな格好のじいさん、昔のじいさんとおなじなわけがないのである。
 
 現代の老人たちの多くは、いってみれば団塊老人である。
内面の価値観もまるっきり変わってしまったようである。

【著者略歴】勢古浩爾(せこ・こうじ)
1947 年、大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に入社、34年間勤続し、2006年に退職。以後、執筆活動に専念。著書に『定年後のリアル』(草思社文庫)シリーズ、『ひとりぼっちの辞典』(清流出版)、『ただ生きる』(夕日書房)、『自分がおじいさんになるということ』(草思社文庫)、『バカ老人たちよ!』(夕日書房)など多数。

勢古浩爾さんの辛口で痛快なエッセイ『おれは老人?』(清流出版)

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