ラジオは放送開始から100年(写真/GettyImages)
歴史と伝統から学ぶべきものは多い。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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ご承知の通り、2025年の今年は「昭和100年」です。そして、ラジオ放送のスタートから数えて「放送100年」でもあります。1925(大正14)年3月22日9時半に、NHKの前身である東京放送局が東京・芝浦から本放送をスタート。第一声は「こんにち、ただいまより放送を開始いたします」だったとか。
最近は「人生100年時代」とも言われています。何かと100年付いている昨今、100年にゆかりのあれやこれやを堪能してみましょう。「昭和100年」を目いっぱい味わいつつ、その重みを嚙みしめ、100歳に向けての景気づけになるに違いありません。
何はさておきラジオは必須です。スマホやパソコン経由ではなく、昔ながらのAMラジオでNHKの放送を聞きましょう。トランジスタラジオじゃなくて鉱石ラジオなら完璧ですが、それはちょっとハードルが高すぎますね。
1925年を含む「大正時代」は、繊維や鉄鋼、造船などの産業が発展し、文化面でも「大正モダン」と呼ばれる大衆文化が花開きました。都市部ではホワイトカラーが台頭して、職業婦人も増え始めます。大正末期にあたる1925年は、前々年の関東大震災からの復興が進められ、日本が近代化に向けて大きく前進した頃でした。
山手線が環状運転をスタート。熱海駅や由布院駅も誕生した
関東周辺にお住まいの方は、1925年に環状運転が始まった山手線に乗り込んで、心の中で「100年おめでとう」と呟きながら一周したいところ。うっかり口に出してしまうと、周囲から冷たい視線を浴びてしまうのでご注意ください。
千葉・小湊鉄道が五井駅‐里見駅間で営業を開始したのも1925年のこと。現在、100周年を記念するイベントやグッズの販売が行なわれています。東京・三軒茶屋と下高井戸を結ぶ路面電車の世田谷線(東急電鉄)や、愛知・豊橋の市内を走る路面電車の東田本線(豊鉄市内線、豊橋鉄道)が開業したのも1925年でした。
1925年に開業した「100歳の駅」を訪ねてみるのもオツなもの。その頃は全国各地に鉄道網が勢いよく広がっていきました。ほんの一例ですが、青森・鰺ケ沢駅(JR東日本)、新潟・越後湯沢駅(JR東日本)、静岡・熱海駅(JR東日本など)、東京・京王八王子駅(京王電鉄)、高知・後免駅(JR四国など)、由布院駅(JR九州)などが開業100年を迎えます(駅名は現在のもの。開業当時は違う名前だった駅もあります)。
「ケロリン」や「キューピーマヨネーズ」や三島由紀夫が誕生した
今年で「100歳」になる商品で、ぜひ手に取りたいのが、解熱鎮痛薬の「ケロリン」(富山めぐみ製薬)です。銭湯や温泉にある黄色いプラスチックの桶でもおなじみですね。3月26日(ふろの日)には、ケロリンの歴史と魅力が詰まった本『ケロリン百年物語』(監修・笹山敬輔)が文藝春秋から発売されます。
とはいえ、「ケロリン」を飲んでその効果を実感するには、まず頭なり歯なりが痛くならなければなりません。なかなかチャンスがないようなら、まずは銭湯でケロリン桶を使って、「ケロリン」に思いを馳せましょう。ただし、ケロリン桶が誕生したのは、62年前の1963(昭和38)年です。余談ですが、私(石原)と同い年です。