屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、リフォーム詐欺とみられる訪問営業に関する実例について。
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ある日、知人の実家にリフォーム詐欺とみられる男がやってきた。手口は、悪質リフォームを繰り返し、3月、警視庁暴力団対策課に建設業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕された”スーパーサラリーマン”こと清水謙行容疑者の手口と同じだ。
清水容疑者は”悪質リフォーム会のカリスマ”とも言われ、自身がトップを務める「清水会」という組織で、複数のリフォーム会社を統括。この5年間で100億円以上を売り上げていた。清水容疑者以外にも、悪質リフォームによって摘発される事件が最近、相次いでいる。
知人の父が体験したケースが清水容疑者と関係したものかは不明だが、その手口は次のようなものだった──。
天気のよい秋の昼過ぎ、地方の一軒家に住む知人の実家のドアチャイムが鳴った。モニターを見ると、玄関前に作業着姿の知らない男性が立っていた。「どちら様ですか」と尋ねると、「すぐ向こうの家でリフォームをやっている業者です」と答えたという。自分のうちに何の用があるのかと思い「何の御用でしょう」と聞くと、「向こうの家の屋根を直していたんですが、お宅の屋根が壊れているのが見えたもので」という返事が返ってきたという。
その地域では数日前に強風が吹き荒れ、街路樹の枝が折れて落ちたり、木が倒れたりというニュースが流れていた矢先のことだ。木造瓦張りの古い建物や、トタン屋根の家が密集するように建っているその地域では、強風がくると”屋根が心配”と不安がる高齢者が多いそうだ。知人の実家も高齢の父親が一人暮らしで、「自分で屋根には上がれないからな」と強風や地震がくると不安を口にするらしい。そんな高齢者の不安に付け込むように、周辺ではリフォーム詐欺を狙う者どもが出没するという。
作業着姿の男は知人の父に「お宅の屋根、このままでは危険ですよ。早めに直したほうがいいですよ」とインターホン越しにまくしたてた。「どんな状態なんですか?」と聞く知人の父に、「向こうの家から遠目で見ただけですけどね。どうも屋根の一部がめくれてるみたいで、風でピラピラしてたんですよ」。それを聞いた知人の父は「わかりました。わざわざ知らせてもらってありがとう」とインターホンを切った。しかし間髪を開けず、再びドアチャイムが鳴った。