“スーパーサラリーマン”清水謙行容疑者がSNSに投稿していた“体育会系すぎる”朝会の様子(SNSより)
「はい」と出ると、モニターには先ほどの作業着姿の男が映っていた。「あのもしよかったら、今から屋根の点検しますよ。ちょうどお昼休みなので、時間がありますから、いかがでしょう?」と畳みかけてきたのだ。「いえ、大丈夫だよ。こっちで点検しますんで」と再びインターホンを切ろうとすると、男は「天気予報だと2~3日中に雨になりそうですよ。早めに点検して対処したほうがいいですよ」。「今時間がないので」と言っても、「点検だけならすぐ済みます」と男は食い下がる。「仕事中だろう、悪いから今度で」と断ると、男は「いえ、時間なら大丈夫です。職人としてこのまま見過ごすわけにはいかないので」と偉そうに答えたのだ。
「啖呵を切るわけにもいかんだろう」
面倒だなと思いつつ、玄関前から帰らない男に業を煮やした知人の父は、インターホンを切って、玄関に出て行った。ガチャリとドアを開け、対面した男は柔らかな笑みを浮かべていたという。「後で連絡するので名刺を下さい」、そう言って知人の父が差し出した左手には小指がなかった。その瞬間、男の顔から笑みが消え、表情が強張ったという。「今、作業中なので名刺は持っていなくて、すみません」と男は頭を下げた。「え~名刺も持たずに、点検しようとしに来たの」と知人の父がいうと、男は「すみません」とそそくさと退散していった。
「やり口がリフォーム詐欺そのものだからさ」という知人の父は元ヤクザだ。引退してから十数年経つというが、ヤクザ気質は抜けないままで「詐欺だとわかったけど、いきなり”テメェーこのヤロー、いったいどこに声かけてんだ。ここが誰の家かわかってるんだろうな。俺様を詐欺ろうなんて、いい根性してるじゃないか”と啖呵を切るわけにもいかんだろう」。
「“あそこの家に親切心で声をかけたら脅された”と詐欺師連中が警察に駆け込むことはないが、普通のリフォーム屋だったということもあるからな」という知人の父は「万が一にもカタギへの対応は丁寧にしておくのが一番」というのが口癖だ。
そんな知人の父の所にも、いわゆるオレオレ詐欺や警察官を名乗る詐欺電話がかかってくるという。知人の父はそれを楽しみしており、かかってくると真っ向勝負で喧嘩を売る。「テメェーこのヤロー、どこに掛けてると思ってんだ。俺を詐欺ろうってのか上等じゃねえか。おい、今すぐ出てこい、こっちに来い、このヤロー」。怒鳴っている間に切れてしまう電話に知人の父は「ろくでもないな」とつぶやいている。