昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
横浜対智弁和歌山という名門対決となった97回目のセンバツ決勝はエース左腕の奥村頼人、1年生の怪物・織田翔希という2枚看板を擁する横浜が制し、19年ぶりの日本一に輝いた。今大会中に起きた異変といえば、ベスト8まで勝ち残った学校のなかに、近畿勢が智弁和歌山のわずか一校だけだったことだ。天理(奈良)が1回戦で敗退するだけでなく、優勝候補と目されていた東洋大姫路(兵庫)も守備のミスが響いて2回戦で姿を消した。
近畿勢の低迷を象徴するように、今大会には98年ぶりに全国屈指の激戦区・大阪勢の出場がなかった。当然、高校野球をリードしてきたあの学校も出場していない。(全3回の第1回)
ついに「大阪桐蔭一強」に“翳り”が……!?
聖地・甲子園で史上最多となる通算70勝を挙げている大阪桐蔭の西谷浩一監督は、昨秋の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れて6年連続のセンバツ出場の道が絶望的になると、こう声を落とした。
「競り勝たないといけないところで、競り負けてしまった。選手は精一杯やってくれましたが、力足らず、でした。夏一本に絞って、がんばるしかないです。課題? 攻撃もディフェンスもすべてです」
西谷監督を囲む記者はわずか数分で取材を終わらせ、輪を解いた。冷静にチームの状況を口にしながらも、最多勝監督の声色に、尋常ならざる心中を察したからだろう。
高校野球は長く大阪桐蔭の一強時代が続いてきた。
藤浪晋太郎(現・マリナーズ傘下)や森友哉(現・オリックス)を擁して春夏連覇を遂げた2012年が基点だろうか。2018年にも根尾昂(現・中日)らで史上初めて2度目の春夏連覇を達成。春夏あわせて9度の全国制覇を記録するだけでなく、西谷監督の通算勝利数は高嶋仁氏(智弁和歌山前監督)を越え、歴代最多となった。甲子園で勝利した試合よりも、敗れた試合のほうが大きな注目を集める(大きく報じられる)学校なんて、大阪桐蔭ぐらいのものだ。
100年を優に超える高校野球の歴史にあって、10年以上にわたって覇者であり続けた学校は過去にない。昭和後期となる1980年代に荒木大輔を擁して5季連続で甲子園に出場した東京の名門・早稲田実業や、金属バット導入のタイミングでその荒木を打ち崩した徳島・池田ですら全国の学校が背中を追ったのは3年ほどだ。
そして池田の夏春夏3連覇を阻止して絶大な人気を誇ったPL学園(大阪、2016年に活動休止)も、最盛期は桑田真澄と清原和博が入学した1983年から立浪和義や宮本慎也らが春夏連覇を遂げた1987年までの5年間だろう。
しかし、いよいよ大阪桐蔭時代にも翳(かげ)りが見え始めたのかもしれない。