川上弘美(かわかみ・ひろみ)/1958年、東京都生まれ。1994年「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。1996年「蛇を踏む」(芥川賞)、1999年『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、2001年『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)、2016年『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花文学賞)などのほか著作多数
言葉のリスクと希望
鈴木:言葉は便利で素晴らしい意思疎通のツールですが、リスクもあります。他者を騙すために使われたり、言葉の一部が切り取られてSNSで炎上したり。これは人間だけではなくて。シジュウカラの場合も、言葉を使って相手を騙すこともあるんですよ。
川上:シジュウカラも相手を騙すのか! ちなみにSNSには恐ろしい面があるのは事実ですが、実は私には大好きな発信をしてくれるX(旧Twitter)アカウントがいくつかあり、いつも楽しく見ているんです。自分から発信することは一切ないのですが。見も知らぬ人の言葉が日々の喜びになる、それこそ鈴木さんのおっしゃる超越性なのかもしれず、言葉というものの奥深さを感じます。
鈴木:はい、僕はシジュウカラの研究を通して、生物によって見ている世界がまったく違うことを知りましたが、それは人間同士でも同じことです。でも、それぞれのまったく異なる世界をつなぐことができるのが言葉なんですね。今日、ここで小説家と研究者という異質な二人が言葉で語り合ったように。
(前編から読む)
【プロフィール】
鈴木俊貴(すずき・としたか)/1983年、東京都生まれ。東京大学准教授。動物言語学者。日本学術振興会特別研究員SPD、京都大学白眉センター特定助教などを経て現職。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本生態学会宮地賞、日本動物行動学会賞、World OMOSIROI Awardなど受賞多数。シジュウカラに言語能力を発見し、動物たちの言葉を解き明かす新しい学問、「動物言語学」を創設。
川上弘美(かわかみ・ひろみ)/1958年、東京都生まれ。1994年「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。1996年「蛇を踏む」(芥川賞)、1999年『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、2001年『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)、2016年『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花文学賞)などのほか著作多数。2019年紫綬褒章受章。
取材・文/佐藤喬
※週刊ポスト2025年4月11日号