スポーツ
人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた

「怪物・江川」を打ち砕き首位・巨人にサヨナラ勝ち…打って勝つ「野武士野球」の真骨頂に酔いしれた1982年9月の夜【中日ドラゴンズに学ぶ人生の教訓】

(産経新聞社)

8年ぶりのリーグ優勝が決まったのは最終戦だった(産経新聞社)

「日中問題」を専門とする大学教授が「中日問題」を論じた異色の新書『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』が話題だ。同書の著者で、物心ついた頃からのドラファンである富坂聰氏(拓殖大学海外事情研究所教授)が綴るシリーズ第13回では、首位を走る宿敵・巨人との対決に劇的サヨナラで勝利し、8年ぶりのリーグ優勝を大きく引き寄せた1982年9月28日を振り返る。(シリーズ第13回。第1回から読む

 * * *
 ドラ1たちの話を延々続けると少し憂鬱になってしまうので、この辺りでドラゴンズの大活躍で燃え上がりたい。

 1982年9月28日、伝説となった対ジャイアンツ戦での大逆転劇だ。シーズン終盤、首位を走る巨人を2位の中日が2.5ゲーム差で追いかけていた。

 実はこの3連戦の初戦、巨人が勝てば、優勝はほぼ巨人の手中に収まるとマスコミが騒いでいた。しかし負け数と残り試合数の妙で、中日にも優勝の可能性が残されていた。勝てば逆に中日にマジックが点灯するからだ。

 しかし世の中の流れは、すでに「巨人優勝」が既定事実。ドラゴンズなど、ジャイアンツの進む前に置かれた小石とばかりに、さっさと蹴散らして優勝だという雰囲気だった。

 よかろう。ならばドラゴンズは西南戦争の熊本城だ。目にもの見せてやろう。

 ドラゴンズの前に立ちはだかったのは「昭和の怪物」江川卓投手だ。江川は球界の怪物という以上にドラゴンズにめっぽう強く、しかもこの日の登板は中6日と休養十分だった。そして試合は案の定の展開となった。中日打線は江川の前に沈黙。対する巨人は原辰徳選手のスリーランなどで6対2と大きく差をつけて最終回を迎えたのだ。

 私もこの日、たまたま野球中継を観ていたのだが、中日が最後の攻撃に入る前のCMで、すでに忘却の水、レーテーの水を飲む準備に入っていた。

 でも、水の中に竜神はいるのだよ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
第一子誕生の大谷翔平、広告出演オファー殺到でスポンサー収入200億円突破も ベビー関連・ファミリー関連企業から熱視線、争奪戦早くも開始か 
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
金メダル級の演技(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』で“韋駄天おのぶ”を演じる今田美桜の俊足秘話 「元陸上部で中学校の運動会ではリレーの選手に」、ヒロイン選考オーディションでは「走りのテスト」も
週刊ポスト
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
(撮影/田中麻以)
【高市早苗氏独占インタビュー】今だから明かせる自民党総裁選挙の裏側「ある派閥では決選投票で『男に入れろ』という指令が出ていたと聞いた」
週刊ポスト
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン