バレルと呼ばれる先端部分が太くなっている「魚雷バット」(Getty Images)
MLBは規制に動くか?
ヤンキースの新記録は魚雷バットなしでは果たせなかったことになる。では、MLBは新兵器の規制に動くのか。友成氏が続ける。
「バットは、ヤンキースがMLBの承認の下で開発したものです。日本で禁止されている圧縮バット(樹脂を注入し、反発力を高めたバット)とは違うわけです。違反バットにうるさいMLBが、認めたものをすぐに取り消すわけにはいかないでしょう。すでに他球団でもオリオールズのアドリー・ラッチマンやメッツのフランシスコ・リンドーアなど、複数の選手が使用し始めています。
一方で、ヤンキースの主砲アーロン・ジャッジはこのバットを使っていません。使わなくても60本は打てるということなんでしょうね。パワーは中の上といった中距離バッターが最も恩恵を受けるバットだと思います。これまで外野フライだった打球がフェンスを越えることで、本塁打10~20本級の打者を25~35本級に化けさせる効果はありそうです」
昨シーズン54本塁打を記録した大谷翔平選手が、新型バットを握る日はあるのか。
「大谷はバットの素材にこだわり、これまでアオダモからバーチ、メープルと変えてきた。オフシーズンにはいろんなバット、素材を試しているはず。もちろん『トルピードバット』も試していると思います。
しかし、大谷が採用したのは『超長尺バット』。日本の一般的なバットの長さより1インチ(2.5センチメートル)長いバットをこれまで使っていましたが、今季はさらに0.5インチ長くしました。彼が苦手とする外に逃げていくスライダーにバットが届くようにするためです。いずれ新型バットを使うかもしれませんが、ジャッジが使ってからでしょうね」(友成氏)
スター選手が新兵器にどう向き合うのか。まだまだ議論は尽きなそうだ。
※週刊ポスト2025年4月18・25日号