「自動車検査証(車検証)」と車体番号を確認することで盗難車を見分けることが多い(写真提供/イメージマート)
金融車とは、平たく言えばローンが残ったまま、ローン会社などに無断で売買される車両を指す。ローン残債のある車を担保に別の融資を受けるも、その融資が焦げ付いてしまい、担保にされている車が強制的に売却されるようなケースが多いのだという。その場合、通常の自動車販売なら必ず行われる車検証の名義変更はされないことがほとんどだ。
「そういう車は現金一括、格安で購入できます。例えば、車種にもよりますが最新型なら市価の3分の2程度で、製造から5~6年が経った多少古いものはほぼ半額程度で買えるのです。また、売主も即金を希望しているので買い主の素性を問わないパターンも多い。金融車の存在そのものは違法ではないのですが、届け出と使用者が違うことで様々なトラブルも起きやすい。他には、フロントといわれるような暴力団の傘下企業の法人名義で購入するパターンもありました。お恥ずかしい話ですが、10数年前に私もこうした取引に関与してしまったことがあります」(中古車チェーン代表)
かつての暴力団は、大量の現金を積んで好き勝手にいろいろな事をしてきた。ところが暴力団対策法が施行されてから30年以上が経つ最近は、当局による様々な締め付けにより、いわゆるシノギが無くなり金がない。しかし、まさか組幹部が中古の軽に乗るわけにもいかない。それでも諦められないとなると、格安で高級車に乗ることができる違法な手法は一択であろう。関東南部に本拠地を置いた、指定暴力団二次団体の元幹部の男性(50代)が説明する。
「組関係者に人気があるのは、アルファードとヴェルファイア。(後部座敷にゆとりのある)エグゼクティブラウンジタイプは特に人気で、レクサス、クラウンもいいけど、やはり”アルヴェル”。しかし、中古でも新型は600万以上するので手がでない。だったら安く買えるところから買うんですよ、たとえば盗難車を扱う外国人から。組関係者の息のかかった中古車屋に協力させたりしてやるので、ほとんどの場合バレないんです」(元暴力団幹部)
では、なぜ今回はバレたのか。前出社会部記者が続ける。
「外国人が関与する巨大な車両窃盗グループを当局がずっとマークしていたそうで、捜査する中で発覚した事案でした。この窃盗グループの規模は未知数ですが、闇バイトや非正規滞在の外国人などを盗難の実行役に仕立てる形の車両盗難が全国で相次いでいます。日本と海外の反社会勢力が結託して関与している例も少なくない」(社会部記者)
あらゆるものの価格が上昇しているいま、業界で人気だという「アル・ヴェル」の中古車価格も天井知らずの様相だ。一方で暴力団関係者やその周辺界隈でのニーズは相変わらず高いまま。アルヴェルだけでなく、高級国産車を中心とした盗難事件は今後も続くはずだ。