電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
電動キックボードなどの電動小型モビリティシェアリングサービス大手「LUUP」が、危険走行を検知し警告やペナルティーを課すシステムを導入すると発表した。他にも利用時に受ける交通テストルールの強化、進入禁止エリアの事前通知など、安全対策を強化する方針を打ち出している。それというのも、2023年7月の改正道路交通法施行で16歳以上なら運転免許なしで乗れるようになって以降、事故が急増しており、その多くに飲酒運転などキックボード利用者の法令違反が見られるからだ。ライターの宮添優氏が「新しい次世代の乗り物」対策のために、優良ドライバーが決めたことについてレポートする。
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「もう都心の運転は怖いです。最近はほとんど車を外に出さなくなった。外出の機会も減ってしまいました」
どこか悲しげな笑みを浮かべ筆者の取材に応じたのは、東京屈指の高級住宅街として知られる、渋谷・松濤の閑静な住宅街に住む女性(60代)。高齢のため運転をやめた、という話ではない。女性は今も貿易会社経営に携わっており、認知もはっきりしていれば、週に2度のテニスも欠かさぬほど元気である。にもかかわらず車から距離をとっているのには、別の理由があるという。
「最近は、車や自転車以外の乗り物がたくさん走っているでしょう? スケボーっていうの? 小さなゲームの車みたいなのも、毎日走っているんです。特に、(渋谷の)自宅周辺に多くて、以前、ゲームの車(カート)に当て逃げされたこともあって、本当に怖い思いをしたんですよ」(渋谷区在住の女性)
筆者はこれまで、法改正でヘルメットを着用せずに運転できるようになった電動キックボード、そして、カテゴリ的には原動機付自転車でありながら自転車のふりをして爆走するユーザーが多い「モペット」、さらに外国人観光客などに根強い人気がある、公道を走る「レンタルカート」について取材を重ねてきた。
いずれも、ルールを守っていれば何の問題もない。ところが、例えば電動キックボードでは、利用者による歩道走行や信号無視、二人乗りに飲酒運転といった違法走行がたびたび見られ、都内の繁華街を歩けば、ナンバープレートがない違法モペットを見ない日はないほど。レンタルカートについても、毎週のように街角で事故や接触トラブルを目の当たりにする。これらの出来事はSNSでも似たような目撃や体験の投稿がされており、筆者は都度確認している。当然、運転のプロたちからも、不満の声はかなり上がっている。
渋滞をすり抜けていく際にバスに当て逃げ
「電動キックボードの違法走行は、見ない日がないほど。違法モペットもあちこちにいて、渋滞をすり抜けていく際にバスに当て逃げ、なんてことも日常的に起きています。いつか大きな事故が起きるはずですが、こちらはバス。相手方の命を奪ってしまうのではないかと不安だし、怒りも湧きます」