ペダル付き原付き自転車「モペット」を取り締まる警察官(時事通信フォト)
こう不満を吐露するのは、都内を走る路線バスの運転手。特に夜に賑やかになる繁華街があるターミナル駅近辺は、こうした「あたらしい乗り物」を利用する若いユーザーが多い。そのため、毎日のように何らかのトラブルに遭遇するのだという。
「新しいとされる乗り物に共通しているのが、ユーザーの遵法意識がとにかく低いこと。客が外国人だから、若者だからとか関係ないです。遵法意識も低いから、周囲のことなんか全く気にしないし、万一事故を起こしたら逃げることも少なくない。交通ルールは、皆が守るから安全が担保されるわけであって、交通ルールを守らない人が多く利用する乗り物など、そもそも公道を走行させるべきではなかったはず。社内でも、こうした乗り物との接触事故が多発していると、いつも注意喚起されますが、悪いのはどちらだ?という感じです」(渋谷区内を走るバスの運転手)
もちろん、お行儀よく運転しているユーザーもいないわけではない。だが、法改正で敷居が低くなって急速に普及した見返りなのだろうか、「新しい乗り物」を自分勝手に使うユーザーが後を絶たない。
筆者もつい先日、東京・港区内の繁華街で外国人が集団で運転していたレンタルカートと、こちらも外国人ドライバーが運転していたと見られるレンタカーの事故を目撃した。どちらが被害者で加害者なのか判然としなかったが、どちらも日本の交通ルールをほとんど理解しておらず、異なる言葉を話す外国人同士のため、お互いにつかみ合う大きなトラブルに発展した。その間、一時的に大きな道路は通行不能に陥ったが、周囲の日本人はあっけにとられるしかなかった。現場に言わせた中年男性は「こういう新しい乗り物が増えて、古い人間はますます運転が出来なくなるな」と思わず不満を漏らした。
電動キックボードやモペット、レンタルカートは、新しい「次世代の乗り物」として、また、日本観光の「目玉」とも言われ、大いに注目された。最初こそマスコミは好意的に報じたが、違法走行をやめないユーザーが相次ぐと、今度は社会問題として取り上げられることが増えた。実際、自動車を運転する真面目なドライバーたちは自分が加害者となる事故に巻き込まれるのを恐れている。「怖くて車を運転できない」と言う前出の女性のように、優良ドライバーを自動車から遠ざけるだけでなく、公共交通に支障を来すようになる前に、交通安全について広く認知を高める方策が必要ではないか。