『7時にあいまショー』「坂本九ショー」より。坂本九が土管の前で歌唱している
実相寺は、新人時代、今野勉や並木章らTBS同期のメンバーと同人誌「dA(ダー)」を作ったり、先輩に怒られながらも挑発的な作品を撮ったりしていた。そんな実相寺監督の姿勢に、佐井は強く共感する。
「実相寺は、まだテレビドラマのセオリーが確立していなかった時代に、自分が“いい”と思うことを貫いていました。映画や舞台、本から得た理論をベースに、現場でのAD経験も踏まえて、それを信じて実践していたのだと思います」
「隠れた名作」の名俳優が多数出演
今回上映される8本のうち、ドラマ作品6本(※註)は、それぞれまったく違う演出スタイルで撮影されている。
※註:母親を主題にした1話完結のドラマシリーズ『おかあさん』の中から、映画祭で上映される6本は、大島渚が脚本を手がけた第178話「あなたを呼ぶ声」、菅井きん、原保美出演の第184話「生きる」、斉藤チヤ子と田村正和が共演した第190話「あつまり」、第207話「鏡の中の鏡」、原知佐子主演の第212話「さらばルイジアナ」、第236話「汗」。それに加えて、ドラマ風演出が用いられた音楽番組『7時にあいまショー 坂本九ショー』、円谷英二に迫ったドキュメンタリー『現代の主役 ウルトラQのおやじ』も上映される。
「別の演出家が撮ったと言われてもそう思ってしまうほど表現方法が違います。ご本人がどういう表現、どういうテーマが自分にとっていいのかをすごく模索していた時期だったんだと思います」
ちなみに「あなたを呼ぶ声」には、『機動戦士ガンダム』シリーズのシャアの声優で知られる池田秀一が子役時代に出演している。また、「あつまり」では、若き日の田村正和の演技を見ることができる。出演陣の顔ぶれもまた貴重で、見どころのひとつだ。
「あと実相寺ファン的には、『あつまり』に出ている斉藤チヤ子さん。実相寺のお気に入り的な存在で『怪奇大作戦』の第25話「京都買います」のヒロインにも起用されています」